これまで -学生時代- | 湧flow

これまで -学生時代-

絵を専攻していた学生時代、最初の三年間は、悩みながら、とにかく懸命に課題をこなしました。当時の授業は、課題の最後に、先生が学生の作品を一番から順に並べて講評するという形式をとっていました。
描き込んであるのでビリにはならないのですが、私の作品は、一番にはならない絵でした。一番望んでいるものだったにもかかわらず…。

評価だけを求め、それが得られないことに悩んでいた私にとって、「描くこと」は、まるで修行のように苦しく、描くことそのものを楽しむこともできなければ、描いたものを受け入れることもできませんでした。

そして三年が過ぎ、最終学年を迎え、恒例の一週間の「風景画実習」のために長野県の白馬村に行った時のこと。朝、民宿でお弁当を受け取り、川の脇に陣取り、遠景に白馬をみながら、絵を描くことにしました。周りに人影はなく、初春の陽射しを浴び、川の流れる音を聞き、ただただ心地良い午後。描いているという意識もなく筆が進み、仕上がった絵を好きだと思えました。

それから卒業までの半年間は、だれかの評価を求めて描くのではなく、ただ描くことが「喜び」であったとても幸せな期間でした。
それは「納得できる絵が描けたらきっとこんな風に感じるだろう」と予想していた高揚した感覚とは異なり、自意識の強い私にしては、とても謙虚に静かに味わった「喜び」でした。