これまで -描かない日々のはじまり- | 湧flow

これまで -描かない日々のはじまり-

もともと教員養成のための大学でしたので、美術専攻の学生の多くは、教師の道を選びました。私も教員になるコースをとってはいましたが、教育実習での体験から教師になる自信がなかったのと、採用試験がいやで、大学卒業後東京に移り、小さなデザイン事務所に就職。半年がたった頃に、私は、大学の先輩から聞いた転職の話に飛びつき、そのデザイン事務所をやめて、コンピュータメーカーの子会社の出版部に移りました。

社会人になったばかりであることや、隣家が100mも離れたところに建っていたそれまでの環境と、人も建物も混み合った東京の環境のギャップ、その他いろいろなストレスが重なって、絵を描く時間と心のゆとりを確保することはできませんでした。
それでも、部屋にキャンバスを置き、描こうと試みることはありましたが、描きかけてはやめることを繰り返して何も形にできないまま、描けない自分、描かない自分を責めて、どんどん追いつめました。
この時に私が出した結論は「このままだとおかしくなってしまう。本当に描きたいと思うまで、筆を置いてみよう」。そして、描かない十数年が始まりました。