アイスクリーム 曖昧さ回避【初序】世界での普及 日本での普及
原材料
アイスクリームの原材料としては、乳製品、糖分、油脂、安定剤、乳化剤、香料が使用される。
乳製品
乳製品は大きく分けて、乳脂肪源となるもの、無脂乳固形分と呼ばれる脂肪以外の乳固形分源となるもの、両方を含むものに分類される。乳脂肪源となるものとしては生クリームや無塩バターがある。無塩バターの方が安価であるが、発酵臭が欠点となりうる。脂肪以外の乳固形分源となるものとしては脱脂粉乳や脱脂練乳がある。これらも特有の臭いが欠点となりうる。両方を含むものとしては乳や濃縮乳、全脂粉乳や全脂練乳がある。また、脂肪分操作のために、脱脂粉乳を造る際に分離した乳脂肪を添加する場合もある。通常、「乳」は牛乳を意味するが、まれにヤギや羊の乳のものもあるので一概に牛乳と解釈するのは誤解といえる。
乳脂肪分と無脂乳固形分の量比はそれぞれ出来上がったアイスクリームの性質に大きな影響を及ぼす。乳脂肪分が多いと舌触りが滑らかになるが、多すぎると空気を含みにくくなるので硬くなる。無脂乳固形分は乳タンパク質や乳糖、ミネラルなどからなる。味にコクを与え、空気を含みやすくするが、多すぎると乳糖が結晶化してザラザラした食感になってしまう。
糖分
アイスクリームに甘味を与えるために糖分を添加する。アイスクリームは冷えた状態で味わうため甘味を感じにくくなる。そこでアイスクリームミックスに対してショ糖なら15%前後とかなりの高い割合で添加する。ショ糖以外にブドウ糖や異性化糖、水飴などが使用される。それぞれの甘味や物性によりアイスクリームの風味が変化する。例えばブドウ糖は清涼感をもたらす効果がある。水飴以外の糖は凝固点降下により、アイスクリームミックスを凍結しにくくする。これはミルクの味わいを強くする効果があるが、アイスクリームが融けやすくなるので加減が重要である。
油脂
アイスミルクやラクトアイスに脂肪分を補う目的で使用される。また、原料コストの低減や健康を意識した観点の商品では、植物性油脂が使用される(アイスクリームは乳脂肪以外の使用禁止)。これは乳脂肪分と同じように室温付近で固体となり、体温程度の温度では液体となる性質の油脂が使用される。また、油脂自身が特有の臭いを持っていないことが必要である。この条件に適うのはヤシ硬化油やパーム油、綿実油などである。
添加物
- 安定剤
- 乳固形分の乳タンパク質には凍結時にアイスクリームをゲル化させ、空気を保持して氷の結晶を細かく保つ働きがある。しかし、乳固形分の少ないアイスミルクやラクトアイスではその働きが期待できない。また、アイスクリームの輸送や貯蔵などの途中で温度が変動すると一部の氷の結晶が融解して再凍結することで氷の結晶が成長していき硬い食感になってしまう(ヒートショック)。これを防ぐために安定剤が使用される。昔はデンプンやゼラチンが使用されていたが、現在はペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガムなども使用される。ハーゲンダッツは、原則不使用なので取り扱い要注意。
- 乳化剤
- 乳固形分にはある程度乳化剤としての効果があるため、その量の多いアイスクリームでは特に乳化剤を添加しなくとも均一なアイスクリームを作ることができる。しかし、乳固形分の少ないアイスミルクやラクトアイスでは不十分なため乳化剤を添加する必要がある。
- しかし、アイスクリームにも乳化剤を添加する場合がある。このアイスクリーム中の乳化剤の働きは通常期待される界面活性効果とは異なり、逆に凍結時に乳化を適度に破壊して乳脂肪の油滴を大きく成長させることにあるとされている。これによってアイスクリームの食感が水っぽくなくなる。グリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステル、レシチンなどが使用される。
- 天然素材を求める時代の風潮から、これらの添加物も食物由来である場合が多くなった。
- フレーバー
- アイスクリームには乳の味に合うフレーバー(香料)が付与される。バニラ、チョコレート、ストロベリーの3種のフレーバーが主であったが、現在ではそのほかの果実や、抹茶、コーヒーなどの嗜好飲料のフレーバーを添加したものも多くなっている。アイスミルクやラクトアイスでは乳の味を補うためにミルクフレーバーも用いられる。
その他
以下、アイスクリームそのものではないが、アイスクリームとともに供されるものを挙げる。
コーン
詳細は「アイスクリーム・コーン」を参照
食べられる円錐形の受け皿は、アイスクリームコーン(ice cream cone)あるいは単にコーンという。日本語ではカタカナ表記が同じなので勘違いされることが多いが、コーンという呼び名は形状から来ており、原料はトウモロコシ(コーン:corn)ではなく小麦粉である。現在では四角錐のような形状のもの、小型のタルト生地のような形状のものもあり、このような円錐形でないものも含めて小麦粉を焼いて作られる上部の開いた容器は一般にコーンと呼ばれている。ワッフル生地を硬く焼いたワッフルコーンもある。
コーンの発明者は不明である。これに関する最初の文献記述は、Mrs. A. B. Marshall's Cookery Book(1888年)である。Marshallはアイスクリーム製法にさまざまな工夫をした人物として知られ、彼女自身による発明の可能性もある。このカップは、1904年のセントルイス万国博覧会のアイスクリーム売りが使用し、一気に全世界に広まった。
アイスクリーム専門店などでは販売時にコーンを保管しておくためのコーンスタンドが用いられ、販売の際にはコーンの下端に円錐状の紙(スリーブ)が取り付けられることもある。さらに、ソフトクリームなどでは小麦粉の生地を焼いて作られたキャップがアクセントにのせられていることもある。
最中
コーンと同様に小麦粉を生地として用いたものとして最中生地を用いるアイスモナカがある。
デコレーション
アイスクリームグラスなどでアイスクリームが供される場合には、デコレーションとして上にウエハース、硬く焼いたワッフル、シガーロール(円筒状の焼菓子)がのせられることもある。