>  >  > 未解決な物理学の謎9【前編】

2016.04.21

 

 イギリスの物理学者のケルビン卿は1900年にこう言った。「もはや、物理学上に新たな発見はないであろう」。しかし、それから30年も経たないうちにアインシュタインによる相対性理論量子力学によって物理学は革命的な変化を遂げてしまった。現代の物理学者にとって世界はまだ謎に満ちているのである。大手サイエンス系ジャーナルの「Live Science」のレポートによる物理界の9つの「未解決」問題を紹介しよう。


■ダークエネルギー(暗黒エネルギー)とは何か?

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画像は「Wikipedia」より

 天文物理学者が知りうる物質をすべて加算しても、宇宙を構成するには足りないということに気がついた。そしてそのつじつまを合わせるために、宇宙を構成する足りない物質のひとつを仮説的に「ダークエネルギー」とした。

 時空は重力によって内側に引っ張られているにもかかわらず、宇宙全体は膨張し続けており、その膨張速度は加速度的に上昇している。したがってダークエネルギーは負の圧力を持ち、重力によって収縮されるはずの時空を逆に押し広げていると考えられている。

 時空の膨張によって広げられた空間には、空間以上にダークエネルギーがあると考えられている。宇宙の膨張の観察によって計算されたダークエネルギーは、この宇宙空間の約70%をしめるというが、まだ誰もダークエネルギーそのものを発見できていない。最新情報は、2015年8月に研究発表されたもので、ダークエネルギーのほんの一部が発見できるかもしれないという場所を探し当てた程度であるという。

 

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ダークマター(暗黒物質)とは何か?

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画像は「Wikimedia Commons」より

 観察によれば、宇宙の84%の物質は光を放ったり、吸収したりはしていないという。「ダークマター」は、またの名を暗黒物質と呼ばれるように宇宙空間に存在しながらも見ることのできない物質ということになる。直接確認をとることはおろか、いまだに間接的にさえもその存在の確認はとれていないのだが、放射線や宇宙の構造上の重力の作用などからそこにあるとされている物質である。

 ダークマターは、銀河系の周辺部分に充満していて、素粒子物理学の観点からは「WIMPS」と呼ばれる、質量は持つものの相互作用をほとんど持たない素粒子として、天文物理学の観点からは「MACHO」と呼ばれる、電磁波を放出しているものの暗すぎて現時点の観察能力では見つけることができない物質として考えられてはいるが、いまだに発見には至っていない。最新の研究では、ダークマターは宇宙全体に髪の毛のように細長く流れていて、地球からも放出されているとの仮説も出てきている。