前の二記事では、いい事ばかり書いてきました。


でも、発達障害や場面緘黙以外にも、食物アレルギーなどなど、マルチな困難を持つのが、あみの現実。


結論から言うと、小麦の経口免疫療法は中止しなければならなくなってしまいました。


小学生の頃からごくごくわずかずつ増やし、3.0gまで食べられるようになったところで、腹痛や過呼吸を起こすなどして11日間入院。


好酸球性胃腸炎を疑われたこともあり、更には本人が怖がるようになったため、一時中断。


2年間の休憩を経て、あみ自身が治療を再開してもいいという気持ちになりました。治療の前に、胃カメラで検査で好酸球性胃腸炎の確定診断を受けました。消化器内科の医師には、小麦はもう食べないように言われてしまいました。


それでも、小児科のアレルギー専門の主治医は、少しでも食べられた方が心配が多少減るから、本人にその気があるなら、試してみる価値はあると言ってもらえました。


ただし、毎日食べるうどんの量を増やすのは月に一度とし、毎回、一泊入院して、腹痛が起きた時にすぐに対応できるようにしていました。


入院して量を増やすといっても、その量はほんの少しずつ。


4月23日うどん0.3g

5月28日うどん0.5g

7月9日うどん1.0g

8月30日うどん1.5g

9月24日うどん2.0g


といった感じでした。


9月25日からは毎日うどんを2.0g食べ続けました。


たまにお腹が痛くなることはあっても、しばらくすると治まっていたので、なんとか毎日食べ続けました。


ところが、10月11日(月)、あみはトイレに長く籠りました。お腹が痛くなってトイレに籠るのは珍しいことではなかったので、最初はあまり気にしていなかったのですが、さすがに1時間以上は長すぎます。


途中から、「いたーい!😡」「痛い!😡」「お母さん、痛い!」と怒鳴るようになり、そこでやっと尋常ではないことが起こっていると気づいて、様子を見に行きました。


上半身を膝の上まで折り曲げ、痛い痛いと唸っています。その姿勢から動くのは耐えられず、立ち上がることもできないと言います。


痛がり方が半端ではないので、念のため、救急外来へ行くことを提案しましたが、なかなか了承しません。うどんを食べた後に腹痛を起こして救急外来へ行くことは何度かあり、何もしてもらうことはなく、そのうち症状がよくなって帰ることが多かったからです。


私も受診を勧めながらも、いつものようにすぐに帰されるようなたいしたことのないことで、コロナ禍でもあるし、病院を受診することに躊躇いを感じなくはなかったのですが、無理矢理、連れて行きました。


かかりつけの病院は小児科の当番ではなかったので、近くの救急病院へ行きました。到着すると、すぐに診察室に通され、若い先生が対応してくれました。


ルートを取り、血液検査をしたところ、先程の医師より少し歳上と思われる医師が来て、

「アミラーゼという数値が高いです。子供には珍しいので、まず大丈夫だとは思うのですが、急性膵炎ということも考えられなくはないので、CTを撮ってみたいのですが…」

と言いました。


あみの顔は恐怖でいっぱいです。滅多に泣かない子なのですが、涙も滲んでいます。


その様子を見て、医師は大丈夫だからと言いつつ、一度奥へ引き返して、もう一度、来ました。

「今、Pアミラーゼの値も見ているからね。それが低ければ、CTもなしで帰れるから。CTは安全ではあるけど、被爆はするから、子供の場合、避けられたら避けた方がいいし。大丈夫。念のためだから」

と、慰めてくださり、戻って行かれました。


涙を流すのが嫌なあみは、目から出る涙をしきりに拭います。


その間、私もWebで検索しますが、小児の急性膵炎は稀だということ以外、情報は出てきません。


「少ないって、言ってたでしょ。大丈夫だよ」

と私が言っても、涙は後から後から出てきて、

「少ないって言っても、その少ない方になるかもしれないじゃん!少ないかどうかなんて関係ない!」

と、大声は出さないものの、強い調子で言います。


返す言葉が見つかりません。私も常々思っていることです。


何%にしか起こらないと言っても、その何%に入った人にとっては100%です。現に、就学までに9割は自然に治ると言われていた食物アレルギーは治りませんでしたし、一クラスに6人と言われる発達障害でもあります。500人に一人と言われる場面緘黙も。


しばらくして、次に現れた医師は、更に年齢が上の方でした。


「Pアミラーゼの値も高かったので、CTも撮らせてください」

と私に言い、

「怖がらせてごめんね。念のためだから」

とあみに言いました。


CTを撮るに当たっては病院の規則で妊娠検査をすることになっているそうで、あみは14歳にして初めて妊娠検査をしました。医師は「念のため、疑っているわけではない」と繰り返してました。どちらかというと親に向かって言っていたので、子供だと原因となる行為に自覚がなかったり、親に隠していたりすることがあるかもしれないからかもしれません。


あみがCTを撮ってベッドに戻ってくると、今度はまたまた更に貫禄のある、私と同年代と思われる女性医師が訪れたので、あみの悪い予想が当たったことが、それだけでわかりました。


「CTでは、明らかな異常は見られませんでしたが、数値が高いので、念のため少し入院しましょう」


「そうですねぇ。念のためなので、一週間くらい。最初の数日は絶食で、消化の良い物から少しずつ食べるという治療になります。痛みが出たら、痛み止めを使います」


「念のため」「少し」という言葉から一泊くらいを勝手に予想していたので、かなりのショックでした。


結局、絶食中、何もなく、ゼリーから初めて、柔らかく煮た野菜や煮魚の食事に移行していきました。


好酸球性胃腸炎や食物アレルギーとの関連について、私が質問していたのですが、医師は一生懸命調べてくださり、食物アレルギーの権威である医師の報告で、食物アレルギーが関与すると見られる急性膵炎があるにはあったとのことでした。


食物アレルギーが関連していなくても、小児の急性膵炎そのものも1000人に8人とのこと。


本当に稀なケース……


なんにせよ、症状は完全になくなり、アミラーゼの値も正常に戻ったので、予定通り、一週間で退院できました。


更に、入院中に予約してあったMRCP(膵臓や胆嚢、胆管も撮影できるMRI)の結果も異常なしだったので、その病院からは卒業。食物アレルギーに関しては、かかりつけの病院がこの地方では一番だから、引き継ぎの資料を診療情報提供書としてまとめておいたので、持っていくように言われました。


あみは、その医師を今まで出会った中で二番目に信頼していたので、とても残念がっていました。かかりつけの病院の主治医も、三番目に信頼しているのが救いです。


場面緘黙で医師や看護師さんたちとのやり取りが難しいかもしれないので、入院中、私が付き添ったのですが、コロナ禍のせいで、とても窮屈なものでした。


病棟の入口には常にロックがかかっています。付き添いの人間は、一日に一回だけ外へ出られるのですが、その度にスタッフステーションに声をかけて名前を書きます。戻る時はインターフォンで名前を言ってロックを開けてもらいます。


コンビニとカフェがあるのですが、その一回の外出で三食分の食糧を調達します。病院食も注文できるのですが、一食630円はちょっと…。カフェにすごーく美味しくてほっこりするお弁当があって、それを食べるのがちょっとした癒しでした。


この病院の看護師さんたちは、コミュニケーション能力がとても高くて、私が仲介しなくても、名前と生年月日くらいしか声を出せないあみとでも、しっかり意思疎通をしてくださっていました。


おかげで、私も荷物を取りに行ったり、家で一泊したりできました。カーテンで仕切られているので正確にはわかりませんが、小学生と見られる同室の3人が、全員一人で入院している様子だったからかもしれません。


ところで、名古屋市は、現在は中学生までは医療費は無料です。来年度からは高校生の年齢まで無料になります。なので、「病気をしてもお金はかからない」と考える人も多いかもしれません。実際、先日、テレビを見ていたら、節約の達人という人が、「子供は医療費が無料。医療保険は必要ないので解約した」と言っていましたが、大きな病気をしたことがない人の考え方だなぁ、甘い気がするなぁ、と思います。


入院にかかるお金は、病院に払うお金だけではありません。食費は三食自腹で、家で作る一人分よりはるかに高いです。名古屋市の場合は、630円に補助があって470円(病院によるかも)です。でも、付き添いをするなら、付き添い用のベッドが一日2、3百円。付き添いの食事。付き添いをしなければ、お見舞いに行く交通費。退院時、うちはタクシーを使いました。医療費以外のところで、結構かかるのです。


うちは、なんと、ちょうどこの一年前に、コープ共済に加入していました。発達障害があるので、保険は難しいと思っていたのですが、どこかでコープ共済なら入れると聞いて加入したのです。予想外に、発達障害だけなら、普通の共済に条件付きで入れるそうなのですが、アナフィラキシーを起こす程の重い食物アレルギーがあると、告知義務が二つしかないタイプの共済にしか入れなかったのですが、それでも月1,900円で入院日額5,000円もらえたので、とても助かりました。


希望して個室を使えば、プラス1万円くらいかかるので、これでも足りませんが。


個室といえば、入院時、1万円だけど希望するか聞かれたのですが、希望しません、保険の範囲で、と答えました。治療上必要と医師が判断すれば、個室でも差額ベッド代は要らないので、わざわざ希望するほどの経済的余裕はありません。お腹の痛い最中に、あみはこのやり取りを聞いていたようです。


症状が落ち着いた頃、突然、言いました。


「一万円の部屋って、どれだけ広い部屋なんだろうね」


私は大笑いしましたが、確かにそういう考え方もあるかも。他の患者さんに気を遣わなくていいとか、トイレがあるとか、そういうことなんだろうなぁと思います。


でも、経済感覚が身についてきているのがわかって、ちょっと安心しています。


うちでは、旅行する時、あみも一緒にホテルを選びます。ホテルに限らず、何かを買う時には価格込みで相談し合います。特に洋服などは、あみはとてもシビアに判断します。そういうことって、大事なんだなぁ、と思いました。



あみの健康については、心配が絶えません。


数ヶ月前から、後頭部のあたりがモヤモヤすると言います。本人は、「脳腫瘍(私の友達が脳腫瘍で亡くなったからかも)だったらどうしよう」と言うのですが、アレルギーでかかっている主治医は、「脳腫瘍なら左右どちらかで、右半身か左半身のどちらかに影響が出ます」と言っていました。


でも、次の診察の時にもモヤモヤはなくなっていなかったので、念のため、MRIを撮影しました。


結果は、3月2日にわかります。2月25日の予定でしたが、先生の都合で変更になりました。緊急性があるとか追加の検査が必要なら、その前に連絡をいただけるということなので、あまり心配していません。


ただ、「念のため」という言葉は、ちょっと怖いです