芥川龍之介の作品で杜子春という作品がある。

最近は古い文学が無料で読める良い時代になりました。

 

自分が読んだのは中学生の頃でしたが、今読んでも

素敵な作品です。

 

■下から読めます(芥川龍之介 杜子春)

http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/170_15144.html

 

金持ちの息子だった杜子春は親の遺産を遊びに使って散財していまう。

寝る場所もなくなった彼のもとに老人が現れ、「お前は何を考えているんだ?」

今夜寝る場所もなくたたずむ彼に可哀想に思ったのか

「この場所を掘るように」と言われて掘るとそこには黄金の山が・・・

 

大富豪になった彼だったが、そのお金も数年で散財してしまう。

また老人が現れ、「この場所を掘るように」と言われ掘ると・・また黄金の山が

数年後にまた散財・・・「お前は何を考えているんだ?」

 

 

中学時代は杜子春という人間は、同じことを何度も何度も繰り返す人間なんだ・・

と呆れていたが、3回目には老人に会うと

人間に飽きたので仙人にして欲しいと懇願する。「お前は何を考えているんだ?」

 

老人から彼に与えられ鍛錬はどんなことが起こっても「いっさい口をきいてはいけない」というもの

地獄に落とされたり酷い仕打ちを受けても一切しゃべれなかった彼も最後に

両親が自分の代わりに酷い目にあわせるときに言葉を発してしまう。

「お母さん・・」と

 

地獄で親が子供のことを思い嫌な目にあっても我慢して息子を心配する・・

親が自分を愛する姿を見ることで、お金だけで付き合う人との違いを知る。

 

ここで目が覚め現実の世界に戻され、夢であったことを悟る。

最後に「何になっても人間らしい、正直な暮しをするつもりです」と仙人に誓って

杜子春は仙人から家を与えられる。

 

こんな話なのですが、

金を持ってその後散財したとき彼はこんなことを言います。

 

「人間は皆薄情です。私が大金持になつた時には、世辞も追従つゐしようもしますけれど、

一旦貧乏になつて御覧なさい。やさしい顔さへもして見せはしません。

そんなことを考へると、たとひもう一度大金持になつた所が、何にもならないやうな気がするのです。」

 

金があるときは、良い顔をする人は沢山いる、だが金が無くなったとたんに手の平を

返したように付き合いを変える人が世の中に多いことか・・

 

中学生の自分は読後に金が無くてもあっても普通に付き合ってくれる人を友達にしようと

思ったものでした。

 

そして、最後に金を持つよりも「正直な暮らし」を選ぶ彼の心の変化が気持ち良い。

 

何度失敗しても、何度友達がいなくなっても何かに気がつけば人は変われる。

そして、正直な暮らしをすることで理解者が現れ幸せになっていくでしょう・・・

 

そんなことを教えてくれる名作です。