日本人は土地が好き | CAFE' 徒然

日本人は土地が好き

哀しいかな、私の住む市にある町が、住宅地の地価下落日本一となった。
知人はその地価下落日本一の場所からわずか1ブロックの所に住んでいる。
新築で家を建て、一生懸命に住宅ローンを支払い続けているが、購入当初より不動産の価値は下がり続け、
住宅ローンは金利を先払いするので、借金の元本はほとんど減っていない。

ゆとり返済の期間が終わって、支払額がどどーんと増えた知人もいる。
このご時世、右肩上がりで昇給できるわけもなく、結局はローンの組み直しで返済期間がえらく長くなった。

共稼ぎでマンションを買った奴はもっと悲惨な目にあった。
夫婦二人でローンを組んだが、亭主の方がリストラ、あげく病気になってローンは女房一人の肩にのしかかった。
別れたくても、住宅ローンの連帯保証人同士、子は鎹ならぬ、借金が鎹となっていて互いが人質同士である。

みんな死にものぐるいで不動産を買う、一生分の稼ぎを費やして、憑かれたように買う。
でも、失うときは一瞬だ。

しゃれた住宅のチラシを見て、これなら買えると思ったりするのだけれど、何十年も支払い続ける金利、不動産取得に関わる経費、
税金、チラシに書かれている金額の倍くらいの金額を支払う事になるのだ。
家を新築すれば、中身だって新調したくなるだろう、身を削るように無理をしてピカピカのお家を建てる。

不動産に関する仕事をしていた頃、ほとんど毎日色々な物件を見て回った。
住宅ローンが払えずに競売にかけられるケーキのように可愛らしい家、わずか数百万円の保証かぶりで借金のカタにとられる町工場、
兄弟間の争いの中で細切れにされた小さな土地、20数年間のローンを払い終えて、やっと名義変更できた家。

どんなに安くても、前の住人の生き霊が柱にしがみついていそうで、買いたいなという気にはなれなかった。
それでも土地は次から次へと、人の間を渡っていく。
日本人は土地が好き、何故か、減らない、燃えない、盗まれない、腐らない、といったところか。
土地しか信じるに足りるものがないからだろうか。

土地は、罪作りだと思う。

私が持っている土地は、親が残してくれた箸にも棒にもかからない、車も入れない山の中の原野である。
あまりに評価額が低くて、固定資産税もタダである、借金の担保にもならない、買い手もいない。
ほったらかしで年々ジャングルになっていく、もうすぐそこに雪が降る。
私の土地は何も生み出さないが、誰にも何の悪さもしない。