「さてと、帰るか。」


悠哉は仕事を終え、帰り支度を始めた。


時計の針が23時を回った時だった。


「キャッ」


突然入口の方から女性の声がした。


慌てて入口へ行くと一人の女性が倒れていて


その周りには大量の書類が散らばっていた。


「大丈夫ですか?拾うの手伝いますよ。」


何気なく書類を拾うのを手伝おうとしゃがみこんだ。


女性の方は眼鏡をかけていてとても慌てている様子だ。


「えっと・・・どこの部署の方ですか?」


見知らぬ女性に声をかけるなど一瞬戸惑ったが、


あまり見慣れない顔であったので思い切って聞いてみた。


「え!?あ・・・えっと、、じ、人事部です。」


この慌てよう、今の小さな声、そしてこの顔・・・


この人、どこかで・・・


「あ、あの・・・」


不意にその女性に声をかけられた。


「み、水木悠哉さん・・・ですよね?」


何故この人は自分の名前を知っているんだ?


「は、はい。そうですけど・・・」


あなたは?と続けようとしたところで彼女の携帯のバイブ音が響き渡った。


「あ、ちょっとすいません」


そう言って彼女は部屋を出ていった。


その去っていく後姿もなんとなくだが見覚えがある、


そんな感じがした。


その後、散らばっていた書類をすべて拾い、


それを整理して彼女の帰りを待った。


しかし、30分しても彼女は戻ってこなかった。


「急に仕事の事で用件が入ってしまったのかな?」


そう思った悠哉は書類の近くに


「忙しいようなので先に帰ります。お疲れ様でした。」


と、置手紙をして会社を後にした。


悠哉が会社を後にして5分後、彼女は部屋へと戻ってきた。


「あれ?いない・・・帰ったのかな?」


あたりを見渡すと机の上に書類が綺麗に積まれていた。


「あ、整理してくれたんだ・・・」


彼女は整理されてる書類をもう一度確認して、すべてあるのを確認した。


「はぁ・・・」


彼女は溜め息をつき、束ねてある髪を解き、かけていた眼鏡を取った。


「優しい所は昔のままね・・・」


そう言って悠哉のデスクの前に立った。


デスクの上には高校時代の野球部で撮った写真と、中学時代のクラス写真があった。


その中学時代の方の写真を手にした彼女は


「やっと・・・やっと見付けたわよ、、、悠哉くん」


その時、24時を指す時計の音が鳴り響いた・・・