今回は夜中~朝の血糖値を安定させる方法についてです。

基礎インスリンは食事をしていないときの血糖値を
安定させるため、ずーっとだらだら分泌されるインスリンのことです。

基礎インスリンを再現するためには、
最近ではランタスあるいはレベミルがよく使われます。
この2つのインスリンは以前に使用されていた中間型インスリン(N)より
血中濃度を安定させることができます。

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登場人物
Aさん(18) 1型糖尿病 ランタス6単位
Bさん(21) 1型糖尿病 眠前ノボリンN 12単位 
Uさん(45) 糖尿病専門医

…小雨ばらつく、7月初旬。

A:「寝る前の血糖値は150くらいで安定しているのに、
  朝の血糖値が220まで上がってるんだ。
  寝てる間はなんにも食べてないのに。」

B:「朝の血糖値が150くらいで高かったから、
  ノボリンNを8単位から12単位へ増やしたんだ。
  そしたら、なぜか朝の血糖値がもっと上がってしまったんだよ!
  しかも、ときどき夜中の3時くらいに低血糖で目が覚める。」

U:「Aさんはランタスの量を増やしましょう!
   BさんはノボリンNの量を減しましょう!」

B:「けど、Nの量を減らすと朝の血糖値はもっと高くなっちゃうよ。。」

U:「BさんはノボリンNを増やしたため、
  夜中に血糖値が下がり過ぎてるから、
  体が低血糖に抵抗して、血糖値が逆に上がりすぎるんです。
  Aさんの現象を暁現象、Bさんの現象をソモジー効果と呼びます。」

U:「夜間の血糖値が不安定かも?って感じたら、
  月1回でよいので、朝3:00の血糖値を測る
  夜の基礎インスリンが適切かどうか評価できますよ!」
  *もちろんすでに夜間あるいは早朝空腹時血糖が
    安定している人は無理に夜中起きる必要はありません。
  
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前回お話したように、
コルチゾルは強力に血糖値を上昇させるホルモンです。
コルチゾルは一日のなかで変動しており、
夜中はほとんど分泌されず、朝4:00頃より急激に上昇します。

下に正常・暁現象・ソモジー現象のイラストを示します。

糖尿病を理解して ストレスフリーな毎日を!


「正常パターン」
4時からの急激なコルチゾルの上昇に
あわせてインスリンも上昇しています。
そのため、朝の血糖値は正常です。


「暁現象」
Aさんでみられた暁現象は、
朝4時からのコルチゾル上昇に対する
インスリンが不足しています。
そのため、朝の血糖値が上昇してしまっています。


「ソモジー効果」

Bさんの現象をソモジー効果と呼びます。
Bさんは朝の血糖値が高いのを、
インスリンが不足しているためと思い、
ノボリンNを増量しました。

その結果、夜2時ごろの
インスリンが過剰となり、低血糖となりました。
低血糖になると血糖値を上昇させるために、
コルチゾルが大量分泌されます。
この過剰なコルチゾル分泌により、
朝の血糖値が上がってしまったのです。


【見破り方!!】
朝の血糖値が安定しないなぁ。。
と感じたら、夜中3:00の血糖測定をおススメします。

眠前の血糖値が100-180くらいで安定しているときに、
夜中3:00の血糖値を測ってみましょう。
 *眠前血糖が安定しているのがポイントです。

ソモジー効果では、そのとき低血糖になっています。
暁現象では、そのとき正常~高血糖になっています。

【対処法】
ソモジー効果の対処法は2つです。
 ①インスリン量を減らして、夜間低血糖を回避する。
 ②インスリンの種類を変更して、夜間低血糖を回避する。
  *夜間の血糖値のコントロールが難しい場合、
    究極の解決方法はCSIIです。
    CSIIは夜中の基礎インスリン量を微調整することができます。


暁現象の対処法は同様に
 ①基礎インスリンの増量する。
 ②インスリンの種類を変更する。



夜間あるいは早朝空腹時の血糖値を安定させることは大事です。
夜間低血糖は体に悪いし、夜間高血糖はA1cを上昇させます。

夜間の血糖値を安定させることで、自分の患者さんでは
A1cが平均7.0→6.3%まで低下しました。
夜中に起きるのは非常にめんどくさいのですが、
夜3:00の血糖測定は重要であると感じています。


上でも書きましたが、すでに夜間の血糖値が安定している人は、
無理に測定したり、CSIIへ切り替える必要はないと思います。


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