通夜の帰り


ついて来てくれた女性の前世が気になって

ふと思い切って告白してみた。



私とあなたは前世でも同僚でした。と


するとその女性は、驚きはしたけれど、気味悪がることもなく、興味津々に私の話を聞いてくれた。



私が思い出したのはこんな話。


私とその女性は同じ廓の同僚で、一緒にお座敷にも上がっていたの。

名前はおぎんさん。
吟って書くのかな。

お吟さんは、とても仕事熱心な方で、お客さんの素をまるまるっと引き受けてしまうのがとても上手だった。
お話の切り返しが絶妙にうまかったし、気配りが細やかで、女郎として扱われることや自分の立場を受け入れている職人のような仕事ぶりに、私はこの人には敵わないなあと思っていた。


一方、時代は贅沢が禁止され、ちまたでは贅沢が厳しく取り締まられているなか、廓にもその影響が出ているような状況だった。


お客さんに、それを取り締まっている横柄で乱暴な役人もいたけど、お吟さんは仕事だからと我慢して相手をしていたようだった。


お吟さんは馴染みの常連客に、キセルや煙草入れなどの装飾品を扱う商人がいて、
お吟さんと夫婦のような仲だった旦那さんが、あるときぱったりと廓に顔を出さなくなった。


お吟さんが心配に思っていると、いつもの嫌な役人が、厳しく取り締まった武勇伝をお座敷で披露した。

お吟さんの馴染みの旦那さんの職業に目をつけて、家財や家を没収し、街にいられなくしてやったと。
この時代に贅沢品を扱う職業など害でしかない、それ見たことか、私は正しい裁きを下したのだと。
お前たち女郎が華美を売りにして商売をしていられるのも、私たち役人が大目に見てやっているからだと。
お前らも世の中の害でしかない、しかしこうやって生きていられるのは、女としての需要があるからだと。
嬉々として語る役人。


それを黙って聞いてきたお吟さんは、こいつのせいか!!!と事の全貌がわかったとたん。


積もり積もった鬱憤が爆発し、ブチギレて、役人に切りかかってもみ合いになってしまった。

力で女が勝てるわけなどなく、お吟さんは、逆にお腹のあたりを切りつけられ、大量に血を流して亡くなってしまった。



という内容だった。




続く