朝方は昨日からの不信任案賛同が加速するように見えて、急転直下、菅首相の「退陣発言」が飛び出し、結果として、大差で否決される結果となった。


確かに一連の動きは、結局、何らの結果ももたらさず、「茶番」と評することで問題はないだろう。


しかし、この「茶番」、”余興としては”結構興味深いものであって、その読み解き方は一様ではない筈だ。メディア報道が菅首相の敗北と受け止めているものを多数報道しているが、私自身は反対の見方をしている。どちらにせよ、当たるも八卦、当たらぬも八卦、ではあるが、以下、私なりの「菅首相並びに民主党執行部の”大勝”論」を紹介してみたい。


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全てのカギは、菅・鳩山会談のタイミングとそれに続く退陣発言の内容、が握っている。


メディアが報じる如く、菅首相が敗北したうえでの退陣発言なのであれば、このタイミングは本来、昨日の2時間と言われる菅・鳩山会談である筈だった。しかし、この時点では菅首相からの退陣発言は引き出せずに終わっている。


昨夜も書いたが、実際には、80名前後の造反を要する、今回の不信任案可決は相当高いハードルだったろう。夜を徹して造反の掻き集めに動いた筈だが、タイムリミットの今朝までには結局、集められなかったとみるのが自然で素直だ。


この結果を受けて、鳩山氏が菅首相と会談を持ったのは、実質、鳩山氏側の「泣きの詫び落とし」だったと思われる。問題は、’落としどころ’’着地点’の見い出しで、血気盛んな造反組に「拳の降ろしどころ」を設けるために、菅首相の「演技」が要求されたのではないだろうか?


事実、よく言われる通り、あの退陣発言には様々な問題点を孕んでいる。特に:


- 不明瞭な退陣のタイミングと条件付け


- 若い人たちへの引き継ぎ、としたところ


は、小沢・鳩山の造反組にとっては本来、飲めない条件だった筈だ。茶番と言われるゆえんでもあるが、これらを以て、実質、菅首相・執行部の勝利宣言と捉えることは十分理に適っている筈である。



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また、造反組が勝利していたならば、80名前後のメンバーに、短時間で不信任案反対への同意を取り付けることは困難だった筈で、結果として、松木氏くらいしか白票を投じなかったのも説明できない。もちろん、横粂氏は単なる若造の、一人先走りで、切り捨てられるだけの微細な話だ。タイゾー君レベルでしかない。



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こう考えると、確かに茶番ではあるものの、印象深いのは小沢氏の影響力が如何に低下したか、を物語るものということだろう。「最後のご奉公」と称していたが、事実は、「最後の悪足掻き」でしかなかったのではないか?



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もう一つ、注視すべき項目がある。昨日の党首討論でいきなり飛び出した、菅首相の「通年国会」発言である。



震災対応の国難に際して、という意味では、通年国会 ~ 即ち、今国会の会期の無期限延長には相当の大義名分がある。仮にこれを強行するとして(反対したいのは自民党だろうから)、同一会期で、今後二度と「内閣不信任案」は出せない。



もしかすると、野党側の天下の宝刀を無駄遣いさせただけに留まらず、二度と使えなくした、という一発逆転ホームランとなったのかもしれない。



だとすると、菅政権は逆に今回の騒動によって、長期安定化することも考えられるのである