敢えて刺激的なタイトルにしてみたが、真意は「スマートグリッド導入を拙速に行うべきではない」ということ。


ある方とのやり取りで、それまで漠然と抱いていた疑問を少し調べてみる気になった。もちろん、素人の調べなので、まだ漠然に違いは無いのだが、自分の直感はそれほど間違っていないとも感じた。現段階では備忘録である。



☆スマートグリッド、はそれほど節電効果は無い。



スマートグリッドとは、電力需要家(家庭、商店、事務所、工場など電気のユーザー)にスマートメーターを設置し、’リアルタイム’で電力消費状況をモニタリングすることによって、供給者側で効率的な発電・給電体制を敷ける、単に電線で電気を送るだけの現在の送電網を高度化させた送電網、と定義できる。



そもそも背景としては、電力自由化に失敗した米国市場において、送電網が老朽化し、送電効率が落ちると同時に危険性も高まったために、言ってみれば、”ことのついでに”高度化させた送電網整備に迫られた、というものであって、日本のように比較的設備更新が為されている送電網と一律比較すべきものではないと思われる。



スマートグリッドに対する根幹的な疑問として;



〇 電力の供給は配置薬商売ではない。即ち、需要家(家庭等)で実際、どの程度の薬(電力)を消費しているか、見に行かなければならない、という性質ではなく、電力線の電位電圧の差にすぎないのだから、総体としてどの程度電力が消費されているか、は供給者側が認識できる。実際に、電力不足懸念のある夏期・冬期においては電力各社はホームページ上で現在の電力使用状況を公表しているのであって、闇雲に生産(発電)して供給しっぱなし、という訳ではない。


その意味で、各需要家側でどの程度消費しているか、という言わばミクロな情報は、需要家自身が自らの電力消費状況を把握し、節電等に努めるという効果はあるが、供給側にしてみれば、補足的な情報に過ぎず、その情報の付加価値は必ずしも高くない。



〇 各需要家側での消費状況、さらに、その”よりリアルタイムに近い”把握、という情報は、それに即応して発電量を調節できるのであれば、更に有効かもしれないが、現実の発電は、それほど柔軟性に富んでいる訳ではない。物理学で考えれば容易に分かることだが:


(水力等の場合)


水などの位置エネルギー ⇒ 水などの運動エネルギー ⇒ タービンを回す運動エネルギー ⇒ 電気エネルギー


(火力・原子力等の場合)


燃料の化学エネルギー ⇒ 燃焼による熱エネルギー ⇒ 蒸気等の運動エネルギー ⇒ タービンを回す運動エネルギー ⇒ 電気エネルギー


(太陽光等の場合)


光などの電磁波の運動(?)エネルギー ⇒ 電気エネルギー



※最後の太陽光はもちろんのこと、前2者についても、相応の大型装置で動かされており、大枠ではコントロールされているが、装置のアクセル・ブレーキはそれなりのリードタイムを要し、機動性は必ずしも高くない。たとえば我々が車を運転する際に、微妙なアクセルの踏み加減を調節することでスピードをコントロールしているようにはいかない、ということ。



☆スマートメーターが節電効果を謳う訳



では、にも拘わらず、スマートグリッド、就中、それに使われるスマートメーターで節電効果を謳う訳、とは何か?例えば、スマートグリッド先進国でシェアの高い、GE社の説明を読んでみる。



【北米におけるスマートメータ導入状況のご紹介】

http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100722a05j.pdf



恐らく経産省の委員会か何かでGE社が説明に用いた資料だろう。これを読み、スマートメーターの構造を見ると、



☆遠隔遮断スィッチ



なるものがオプションで組み入れられている。これが供給側あるいは需要側で作動されることによって、メーターから下にぶら下がっている電気機器等に電気が流れなくなる。言ってみれば、ブレーカーだ。



当たり前の話だが、これが組み入れられることによって、例えば供給側で発電能力を超える需要が生じた際に、供給を(一時的にだが)カットすることが出来る訳で、これが活用されれば供給能力以上に消費されることが無く、結果的に電力需要は抑えられる。



では、我が国においてスマートグリッド・スマートメーターの普及が進んでいく場合、このオプション品である遠隔遮断スィッチは実効的、あるいは、実用的か?



言い換えれば、各家庭や事務所等は、供給者から強制的に供給カットされることを受け入れるか?ということだ。



(長くなるのでエントリを分ける)