更にスマートメーターには解決すべき課題がある。つまり:



☆通信方法の確定



である。スマートメーターで把握された電力消費量などの情報、データは、そこにあるだけでは無意味で、ユーザー側(需要者側)や、供給者側(電力会社側)に提供される必要があるが、問題はどうやって提供されるか?という通信の問題である。



ユーザー側に関してはそれほど問題ではない。設置されるのはたいてい、家の入口や事務所の入り口などだろうから直接、有線で引っ張っても問題ないし、家庭用無線LANのような形も採れる(利用される無線は極めて低出力で電波の問題は生じない)。そもそもユーザー側の利用態様はそれほど厳格な精度は要求されないだろう。もちろん、一部の事業者で繊細な管理を求められる場合もあるだろうが、そうした事業者側ではそもそも間に蓄電池(更に別途の自家発電、含む太陽光等)を噛ませた無停電システムが導入されているだろう。



従って、問題をより厳密に言い換えると:



☆メーターから電力会社への通信手段の確保



ということになる。これに関して先ほどのGE社の資料はあまり情報が多くない。スマートグリッド・ネットワークなるものが構築されるようだが、恐らくそれはケースバイケースの対応に思われ、例えば、BPL(Broadband over PowerLine、電力線・電線を通じたブロードバンド、日本においても研究中)などの記載も見られる。



別の資料を見てみよう。ちょうど、大震災の直前、昨年2月に三菱総研がまとめた資料である:



【国内外におけるスマートメータの導入状況】

http://www.nmij.jp/public/event/2010/forum2010/presentation/nakamura.pdf



NTTなども入って通信ネットワークの検討が進められているようであるが、恐らく事はそう簡単ではない。現在に大抵の家庭や事務所はインターネット回線があると思われるがほとんどが:


*回線会社(NTT等)/インターネットプロバイダ


の組み合わせだ。どちらかがダウンしても通信できない。しかも、電気のない家はないが(たぶん)、インターネットのない家は未だに多い。高齢者宅や都市の独身世帯でも無線WIFI環境が使えれば独自の回線設置は必要ではないから(実際に、家庭無線LAN環境にしてみると実に色々な業者の無線を拾えることに気付く)。


一方で無線となると、携帯にしろPHSにしろ電波の問題、IPアドレスの問題もある。携帯に至っては、それでなくとも、スマホの普及で通信が困難になったりサーバーがダウンするなどの例が続いている。更に夥しい数のメーター端末が増えると(それもリアルタイムで24時間通信はじめると)どうなるかは容易に想像がつく。



こうして考えていくと、東電の仕様が「マルチホップ」であることを批判する人もいるようだが、どうも批判が的を射ていないようにも思われる。



マルチホップは聞きなれない言葉なので調べてみると次のような資料もあった。



【省電力で実現するスマートメータ用無線機の実証実験に成功】 … 独法 情報通信研究機構

http://www.nict.go.jp/press/2011/03/17-1.html



どうやら、マルチホップとTCP/IPプロトコルは別次元の議論だ。



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繰り返すが、こちらは素人なので、恐らくエントリ中に誤った理解や表現があると思うので、ご指摘を受けたい。しかし、現段階の結論としては:



何でもかんでも東電批判、という風潮の下で、スマートグリッドあるいはスマートメーター議論が進められても、それらが正しいとは思われない、ということだ。