そろそろ大型連休が始まるが、
その前に注意したいことがある。

感染爆発の一番の危機的時期でもあるが、
それよりもまずお互いが嫌な思いをしないために。


実は私は、
5年前に倒れた兄の流通事業を引き継いでから、
毎月1回は新潟の田舎にあるもう一つの会社に顔を出している。

 

※参照:「58のお陰さま」

4/20の午前中に東京を出発してお昼前に到着し、
いつものように社員たちが快く迎えてくれると思ったら、
大分雰囲気が違った。

車で行ったのだが、
現地に着くなりいきなり姉が車のそばまで向かってきて、
私を事務所ではなく、工場の陰に手招きしたのだ。

従業員はちょうど休憩らしく、
10人ほどガラス越しに休憩室にいる。

何かおかしい…

いつもなら私の車が到着するのに気付くと、
皆が迎えに出るのだが…

姉が距離を保ってささやいた。

あなた、
工場とか事務所とか今回入らないでもらえる?』


「あぁ、コロナ対策ね、
分かったよ。」

『あと、
従業員にも声を掛けないでくれる?』


「え?
マスクもしてるしクロッシュも持ってきたけど…」

『それでもダメなのよ、
かなりこっちはナーバスになっているの。
あなたに忠告できる人が私しかいないから、
急遽私が呼び出されたのよ。』


実は最近、
近所で東京帰りの大学生がコロナに感染し、
町中が大騒ぎになったのだった。

ものものしい防護服に身を包んだ保健所の係員が、
家の中や周り、
そして学生さんが立ち寄ったお店などを消毒に回る。

一体何ごとが起こったのか…!?

小さな町では、
この異様な光景だけで十分な大事件だった。

この噂が町中に広がり、
その家族は結局村八分状態に。

町民曰く、
「あれだけ帰って来るな…と、
町を挙げて警告していたのに」。


これがきっかけとなって、

町は帰省を自粛した学生に、
マスクや農産物をプレゼントし始めたのだ。

その活動に賛同した地元の農家が、

味噌や農産物なども提供され、
マスコミはこぞってこれを《美談)として報道した。

 



実は美談でも何でもなく、
ただ地方に住む人々は、
都会から人が来て欲しくないだけなのである。

それがいざ感染者が出てしまったら、

「村八分」という現象になる。

 

後々本人にも、

「自分のせい」ということで辛い思いをさせてしまう。

本人だけでなく、
家族全員の責任になってしまう。

結局その大学生の家族は、
その場所に住んでいることがいたたまれなく、
しばらくは留守にしていたらしい。

ひと昔前の話ではない、
現代の話なのだ。

確かに田舎は都会と違って閉鎖的というかもしれない。

冷たいと思うかもしれない。

けれどもそうとは言い切れないのだ。


都会と大きく違う点は、

感染者が入院できる設備も田舎では整ってない事情もある。

 

もう一つとして、

それがむしろ本当の、
身を護るリスクヘッジの考え方のような気もするからだ。

 

歴史的にもそうやって人々は、

自分の閉鎖された村や身を護ってきた。


視野を大きく捉えれば、

この村というのは日本国、

今も海外からの流入を拒んでるではないか。


同じだ。


しかしそれでも、

東京の密集率80%減は厳しく、

パチンコ店を見ても、

意識的にまだまだ危機管理が甘いようにも思える。

 

3密も大事だが、
むしろ皮肉って『集近閉(しゅうきんぺい)』という人もいる。

 

一言でいえば、

『人に近寄るな!私に近づくな!』ということだろう。


特に対面や映画館などでの背後は。


まるでゴルゴ13並みだw。

とにかく冗談抜きで、
今は地方では「東京もん」はすべて感染者扱いで、
マスクで2m離れて話しても相手は「接触者」となる。

目も合わせない。

 

それでも、

田舎の人たちを責めるわけにはいかない。

 

どちらかといえば、

そこまで気にしなかったこちらが悪い。

 

そしてたった1泊なのに、

思いもよらないことが起きた。

今回不要不急でなくても、
社長である私が自分の会社に立ち寄っただけで、
打ち合わせした社員は『接触者』となり、
社員の一人は、
家族である奥さんと娘さんが、
それぞれ勤めている会社から出社拒否となってしまったのだ。


田舎だけにすぐに噂は広まる。

しかもそれだけではない。

社員の同居している、

高齢の母親の転院も問題になっているそうだ。

※転院先の病院のアンケートで、
「2週間以内に県外の人と接触しましたか?」に書かせられる。
『東京』と書いたら入院出来ない可能性が!


しかも嘘をついて書いたとなれば、
本当に村八分になり兼ねない。


この事を、

東京に戻って初めて知った。


自分の故郷に帰る…という毎年の当たり前の行為が、
感染していなくても、
思いもよらない多大な迷惑を家族や近所に掛ける危険性がある。

 

本人に悪気がまったくなくてもこうなってしまう。

しかも、

感染していても症状が表れない人もいることから、
万一近所で感染者が出たら、

どこで自分のせいにされるか分からない。

感染経路を調べるとは、
犯人捜しでもある…という認識を持って欲しい。

 

犯人捜しする方もされる方も、

決していい気分にはならないだろう。

 

この人々の疑心暗鬼が高じて、

中世の魔女狩りを引き起こしたのも歴史の事実。

結局私は、
東京ナンバーのままで近くのスーパーに買い物も行くこともできず、
お土産も一つも買えずに、
翌朝逃げるように東京に戻ってきた。。


どうかこの話が、

どうしても帰郷しなくてはいけない方たちの参考になれば幸いだ。

 

しかも旅行を予定している方たちは、

よくよくこの事態を踏まえて行動して欲しい。

まさに、
「正しく恐れる」とはどういうことなのか…
を考えさせられた体験だった。



※追伸:

新潟の従業員の名誉のために言うが、

私が11年前に命水と出会う前には、

片足が切断されるほどの重病人であることを皆は知っていた。


今は年齢も60を超えてるし、

当然免疫力は通常の人よりはるかに少ない。


主治医からも、

絶対にあなたはコロナにかかってはいけないと念を押されている。


従業員たちは、

毎朝出勤前に自宅で検温を行い、

会社に来てからも再度検温を行い、

37℃以上だった場合にはその場で出勤停止にしていた。


月に一度、

私が訪れることを知っていたからだ。


最近になって、

従業員の二人に微熱があることが分かり、

その日は作業をさせないで帰したと言う。


「絶対に社長にうつしてはいけない…」


この優しさから来るリスク管理の徹底振りが、

皆の意識の根底にあって、

私は勝手に、

皆が私と目を合わせないようにしてると、

勘違いしていたのかもしれない。


礼儀が欠けていたのは、

実は自分であったのかも知れない。。