★★★

 

表紙はコンビニの前で一人ぽつねんと座り込む女の子。
もうこれだけで切ない。

物語は、半年ほど前のある雪の夜に、外で震えている少女に出会った場面から始まる。
少女の名前は眞中ありす(4歳)。

七海未央、青山湊、周東律希、中三の三人は凍死を心配し交番へと送り届け、その行動で後に感謝状を贈られる。

だが彼等の中に引っ掛かっていた事、それが現実だと知った時、ありすの為に何が最善かを考え動き出す。
警察や児相に連絡する事が正しいと思えなくなる社会では意味がない。

見て見ぬふりをしなかった彼等に心打たれ大人がやるべき事を痛感する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

小学校時代からの同級生、歌子・ 厚子・瑞恵。
彼女達はマンション『カーサ・ベラ・ビスタ』の最上階で共に生活する。

68歳の女性3人が暮らすシェアハウスに秘書としてやって来た大学生の速水翔太。
そこに新たに初期の認知症と診断された恒子も加わり悲喜こもごもの日々が始まる。

再就職に苦労したり、ロマンス詐欺に引っ掛かったり、老いらくの恋をしたりと彼女達の毎日は平穏無事とは言い難い。

ギスギスした雰囲気になる時もあれど、歩み寄り助け合う姿が胸を打つ。

翔太と翔太の彼女・美果の存在も良い。

人と人との繋がりに心が温かくなる一冊。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

様々な愛の形が描かれる。

高校生の娘・千夏と、三人の恋人と共に五人で一つ屋根の下で暮らすポリアモリーの伊麻。
束縛彼氏に不快感を感じながらも、交際を断ち切れない千夏。
伊麻の友人で主婦の絹香は、浮気+モラハラ夫との結婚生活に嫌気が差している。

多様性の時代、誰がどんな愛の形を選択しようと本人達の自由だと思うけれど、自分に置き換えるとどれも違和感しか感じなかった。

相互に等しい愛情があれば良いが、相手が束縛と感じその恋愛に苦痛を感じた時点で愛情の天秤は激しく傾いてしまう。

楽しいだけじゃない。

愛って本当にままならない。