いつもどおりに玄関を開けて


いつもどおり「ただいま・・・」と声をかけても


いつもどおりの琴子の全開の笑顔に出迎えられず


「お帰り・・・お兄ちゃん」


と、何か言いたげな祐樹に出迎えられた


また何か企んでるな・・・・と思ってはいたが


寝室のドアを開けたとたんに


黒のミニワンピースに太ももまである黒い網タイツ


悪魔の羽と頭には角のカチューシャ


そして黒い尻尾をつけた琴子に


「とりっく あ~ とりっく♪」と飛びつかれた


ふう~・・・・


トリックって・・・・違うだろ


「琴子」


「な~に~入江くん♪」


ゴロゴロと喉を鳴らす猫のように


半ば、ぶら下がるようにしながら


俺にじゃれ付く琴子を抱えなおし


「それを言うならTrick or Treat?だろ」


「えっ?とりっく おあ とりーと?」


完全に「ひらがな」だったろ今・・・


そんな風に可愛い顔して俺を上目遣いに見るな


その顔が俺を煽るって自覚ないだろ・・・・


まぁ・・・そんな事、絶対に教えないけどな


「Trick or Treat?

 ・・・お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞって

 意味だよ」


「じゃあ・・・お菓子くれなきゃ、いたずらしちゃうぞ♪」


お前・・・・・いきなり英語あきらめただろ・・・


「ふ~ん・・・・お菓子ねぇ

 それって誘ってるの?」


耳元に唇をよせて耳朶を


あま噛みするように囁く


すると瞬間に頬を赤くしながら


「別に・・・誘ってなんかないもん」


「違うんだ・・・そんな格好してるから

 てっきり、そのつもりなんだと思ったのに」


「そんな格好?」


言いながら自分の格好を見返す琴子


どうせ母さんが用意したんだろうけど


裏の意味に気づいてないんだろうな・・・


「その格好、サッキュバスだろ」


「さっきゅばす?」


「淫魔だよ。 性愛をつかさどり

 異性を誘惑し、堕落させ、その精気を吸い取るんだよ」


ニヤリと笑いながら言う俺を見て


琴子がジタバタを俺の腕の中で暴れだす


離すわけないだろ

 

こんな美味しい展開


「せっかく誘惑してくれてるのに

 応えなきゃ悪いもんな」


しっかりと琴子を抱えなおし


部屋の鍵をかけると俺はベットへと歩きだす


「Trick or Trick!

 悪戯または悪戯・・・最初に琴子が言ったんだろ

 だったら俺は、悪戯を選ぶしかないだろ

 Happy Halloween!

 琴子・・・最高の夜にしようぜ」


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