こ・・・と・・・こと・・・ことこ


琴子・・・琴子・・・


「う~ん・・・・もっと名前を呼んで」


「琴子」


「もっと・・・」


「琴子」


「も・・・っと・・・」


「馬鹿琴子!!!

 いい加減にしろ!」


いきなりの大声にビックリして飛び起きる


キョロキョロと辺りを見渡すと


そこはリビングのソファで・・・


どうやら私はソファで転寝してたらしい


「もう・・・・せっかく良い夢見てたのに」


ブツブツと文句を言いながら体制を直すと


目の前には、おっかない顔した裕樹くん


・・・・何だ、さっきのは入江くんじゃなくて

 裕樹くんだったのね・・・・・・・・


「そんなとこで寝てたら風邪ひくだろ馬鹿琴子、

 看護師のくせに、そんな事もわからないのか?」


「もう一度呼んで」


「えっ?何言ってんだ?」


「もう一度、琴子って呼んで」


「はぁ?何だよソレ?

 まだ寝ぼけてるのか?馬鹿琴子」


「あ~ん!!!入江くんの声にソックリ!

 まるで入江くんに呼ばれてるみたい♪」


思わず目の前の裕樹くんに、しがみつく


「入江く~ん!!!寂しいよ~」


「離れろ!馬鹿琴子!!!」


しがみついてる私を引き剥がそうと


裕樹くんが必死になりながら


私の名前を呼ぶ


「何が寂しいだ!

 そんなに呼んでもらいたかったら

 明日、お兄ちゃんに名前を呼んでもらえ!

 僕を巻き込むな!!!」


「そんな意地悪いわないでよ~

 もう1週間も入江くんの顔を見てないんだから」


「神戸の時と違って

 たった1週間だろ?

 何が寂しいだ!とにかく離れろ!

 こんなとこをお兄ちゃんに見られたら

 僕が殺される!!」


そう入江くんは1週間前から学会で京都に出かけてる


裕樹くんは、たかが1週間って言うけど


1週間も入江くんの顔が見れないなんて


寂しいよ~入江くんに名前を呼んで欲しいよ~


ギュッてして欲しいよ~


そんな時に裕樹くんに入江くんソックリな声で


『琴子』って呼ばれたら・・・・もうたまらないじゃない!!


だって、まるですぐ近くに入江くんが居るみたいじゃない


だから・・・ちょっとくらい・・・ねぇ?


「何が、ちょっとくらいねぇ?だ!

 ちょっとも、そっとも無いんだよ

 とにかく離れろ!僕は、まだ死にたくない!」


「それくらいで死ぬわけないじゃない

 ・・・・・・・ケチ・・・・・・・・」


すると裕樹くんは何故かブルブルと振るえだした


「裕樹くん?

 どうしたの?寒いの?風邪?」


私に風邪ひくなんて言っておいて自分が体調崩して


仕方の無い義弟だわ


熱を測ろうとオデコをくっつけようとした瞬間


裕樹くんの顔色が真っ青になった


やだ!本当に大丈夫?


「体調が悪いなら無理せず

 寝たらどうだ?裕樹」


その言葉と共にグイッと裕樹くんから


引き離される


「入江くん?」


「ただいま琴子」


「どうして?だって明日の予定だったでしょ

 帰ってくるの」


「早く終わったんだよ

 何だ帰ってきちゃいけなかったのか?」


「そんな事ない!

 わ~ん!!!入江くん~さびしかったよ」


入江くんがギュウッと抱きしめてくれる


嬉しいよ~


入江くんの香りに包まれてウットリしてる私に


ドサッと何かが落ちる音が聞こえたような・・・・


「琴子

 疲れて帰って来た俺を

 癒してくれないのか?」


「癒す!癒すよ入江くん!」


「じゃあ、部屋に行こう」


そう言いながら、そっと腰を引き寄せられ


2階の私達の部屋へ向う


「あぁ・・・・裕樹

 体調悪いなら、そんなトコで

 寝てないで自分の部屋で休めよ」


階段を上がりながら入江くんが裕樹くんに声をかける


う~ん、さすが私の旦那さま


優しいなぁ


ねぇ・・・入江くん


もっと私の名前を呼んでね


すっごく寂しかったんだから


                         END




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充電完了!妄想生活に復帰しま~すbyミルク

 

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