最近、つくづく思うんですよ。

 

トーキョーエイリアンブラザーズっていいドラマだったな~と

 

良質な映画みたいなドラマでしたよね。

 

 

 

 

 

ラストシーンとか、北野監督のキッズリターンを彷彿させます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなセリフ言ってそうですもん

 

 

 

 

 

冬ノ介「俺たちもう終わっちゃったのかな」

 

 

 

 

 

夏太郎「バカヤローまだ始まっちゃいねーよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終回放送から1ヶ月経ちますが、なぜこのドラマにこんなに心掴まれるのだろうとずっと考えてたんですよ。皆さんも不思議な感覚に陥った作品だったと思うんですが、その理由を

 

てことで、今さらながらエイブラの考察です。

 

 

 

 

 

 

学生のとき哲学書とか読まされたんですけど、スラヴォイ・ジジェクっていうスロベニアの哲学者のおっさんが、こんなこと言ってたの思い出しました。

 

『他の文化が滑稽に映る様子と同じように、もし自身の文化を「異邦人」の視点から捉えたらどうか?どれほど滑稽かが認識できる。自らの文化がいかに偶然かを実感するわけです。生まれついた文化が自然だと思わせる生来のルーツから、離脱することができる』

 

エイブラって基本構造としては、「異邦人」のドラマですよね。

 

異邦人や変わり者の主人公に影響されて周りが変化していくというのはよくあるストーリーなのかもしれませんが、エイブラが特徴的なのは、どちらかというと人間社会に影響されて異邦人の方が変化していく

 

さらに、主人公の異邦人を兄弟にして、成長というのか、いや成長という評価は我々地球人の視点だから、やっぱり変化ですね。「変化の差」に焦点を当てたところが新しいのかなと思います。

 

あちらの世界では優秀な弟とポンコツな兄が、こちらの世界では立場が逆転。嫉妬という地球人的感情が芽生える。結構早い段階から冬ノ介が兄に嫉妬していて、未知の感情に戸惑いながらも最終的にそれを受け入れるというのがドラマの基本ラインなんですが、嫉妬という感情にとらわれたときの伊野ちゃんの表情は怖いようで、実はそれを見るとどこか安心するところがありました。

 

それはたぶん、我々の世界を肯定してくれているからです。

 

 

 

 

 

5話で兄弟がスカイツリーの上から東京の街を見てこんな会話をします。

 

 

夏太郎「すごいな。こんなもの作ろうと思うのが」

 

冬ノ介「人間の果てしない欲望だね。誰かを欲しがったり、競い合ったり、殺し合ったりさ。なんのために作っているのか自分たちもよくわかってないんだよ」

 

夏太郎「生きるためか?」

 

冬ノ介「こんなのなくても生きられるじゃん。むしろないほうが生きやすいし。高いものとか大きいものとか作るのにずっと昔から命かけてるんだよ。チョーバカじゃん。意味わからない星」

 

夏太郎「バカか・・・バカだが・・・意味わかりたいな」

 

 

 

 

 

嫉妬や競争は人間の基本的な感情のひとつで、それが災いして愚かなこともするけれど、逆にそれがなければ私たちの文明は成立しません。

 

だって、夏太郎の「他者に寄り添う心」も、冬ノ介が獲得する「他者への嫉妬心」も、そうした感情がまったくない世界を想像してみてください。とても恐ろしい星です。

 

このドラマは、そんな人間世界を肯定的に描いていて、最終回の「このクソみたいな街も、悪くない」というセリフに象徴されています。

 

 

 

 

 

世界の辺境に住む日本人、みたいな番組が最近多いじゃないですか?

 

ああした番組が人気なのは、見ると安心するからだと思うんです。

 

日本人が異邦人として辺境の地で苦労して生活する様子をのぞくと、異邦人の視点で日本の常識や当たり前が相対化される一方で、「やっぱり日本に住んでてよかった」「日本て素晴らしい」と再確認できる。

 

宇宙人の視点から人間社会の常識を疑うことは、同時にあちらの世界への畏怖や異常性を無意識に意識させます。

 

 

 

 

 

 

つまり、「異邦人の視点による相対化」と「異邦人の変化の差」という二重構造を通じて、見る者に人間社会を悪くないと肯定させる、よく考えられたドラマだと思うわけです。

 

エイブラは、伊野尾慧が演じた作品の中で間違いなく最高傑作だし、個人的には今年最高のドラマでした。

 

今も東京のどこかに冬ノ介と夏太郎は暮らしているのかな

 

また会いたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたにとって私、ただの通りすがり

 

ちょっと振り向いてみただけの宇宙人