「ここでしたくなっちゃった？」
「ええっ！？」
俺は耳を疑った。
今の、山田の、発言だよね？
下ネタの苦手な山田涼介が・・・
ここで？
鏡の前で？
うそだ
俺の知ってる山田はそんなこと言わない
何かの聞き間違い
祈るような気持ちで、もう一度聞き直した。
「いまなんて？」
「鏡の前のプレイも興奮するかも」
最低
俺は山田を突き放した。
「ちょっ、冗談だって」
すぐに今度は前から抱きすくめられてしまう
そして、俺の頭をポンポンして髪を撫でる。
「ごめんて。知念かわいいなあ」
何回、かわいいって言うんだよ
知念のことかわいがりすぎだろ
でも、山田からかわいいと言われるのは悪くなかった。
俺にそんな言葉くれたことないし
山田と視線を合わせる
身長差で、どうしても上目遣いになってしまう。
「うん？」
優しい瞳で見つめ返されると、自分が愛されているような錯覚に陥る。
だ、だめだ！
これは知念のカラダ
甘いムードに流されたらダメだ
そ、そうだよ
この状況、ツッコミどころが多すぎる
まずは、一個一個、事実関係を確認しよう
意を決して、山田に聞いた。
「あのさ、俺たち付き合ってる？」
「おいおい知念」
「付き合ってるんだよね？」
「なにすねてんの？かわいいなあ」
「ちゃんと答えて」
山田は俺の目をまっすぐ見た。
「付き合ってる」
そう言って、微笑んだ。
やっぱり付き合ってるんだ・・・
ショックだった
でもそれよりも、真剣な表情からの優しい笑顔が、最高にかっこいいと思ってしまった。
「い、いつからだよ」
「知念、寝ぼけてるの？」
「いつから！」
「ああ、そういうプレイ？」
「ちがう」
「わかったよ。かわいいなあ」
「いつ？」
「２０１６年の４月でしょ」
やまちね、そんな前から・・・
「同棲は？」
「付き合い始めてすぐだから、もう５年目になるね♪」
ａｎａｎのインタビューで、『クリスマスは毎年知念とクリスハートさんの曲を聴く会やってます。もう５年くらいになるんじゃないかな』って答えてたけど、匂わせかよ！
同棲してりゃ、クリスマスも一緒だよな！
「ゆ、裕翔とかメンバーには内緒、だよね？」
「何言ってんの？知念が言わないでおこうと言ったんじゃん」
知念・・・
「そ、そうだったね」
「知念、なんか、おかしいぞ」
「お、おかしくない。そうだよ、これはプレイだよ。交際歴確認プレイ」
とっさに誤魔化した。
「交際歴確認プレイ・・・ふふっ、わかった」
楽しそうな山田
そういうの好きなんだ
俺の山田像がどんどん壊れていく
「どっちから告白したんだっけ？」
表情が一転して曇る。
「またその話かよ・・・ごめんて。でもあのとき知念が勇気出してくれたから、俺は救われたんだ。感謝してる。これでいい？」
知念からなんだ・・・
あいつ、抜けがけしやがって
そして、この質問をするのは躊躇したけど、止められなかった。
「あの、えーと、初めてのときは・・・」
「知念が告白してくれて、俺がオッケーして、キスしてたら、俺たち止まらなくなって、そのまま・・・」
「も、もう！いい！！」
「知念ほんと真っ赤。かわいい！」
山田はまた俺を強く抱き締めてきた。
「なんか、初めての夜のこと、思い出しちゃったね」
俺に覚えはないけどな
そのときだった
え、なにこれ
山田さん？
俺のお腹のあたりに、硬いものが・・・
山田が密着させていた体を離す
頭をかいて、目は泳いでいる。
「えっと、知念、あ、風邪ひくからさぁ」
両肩に手を置いて子供に言い聞かせるように言うと、俺の、いや知念の体を上から下まで舐めるように見た。
さっきまでと違う、余裕のない目
こんな目をする山田を見たのも初めてだった。
同じ男だからわかる
その瞳には、欲情の炎が宿っていた。
「知念、ベッド戻ろっか」
「あ、うん・・・て、え？」
山田は有無を言わさず、強引に俺の手を引いて、寝室へと歩き出した。
つづく