「・・・なに、してんの？」
サイアクだ
山田に見られた
「知念くん、ソレ、何してるのかな？」
口角は上がっていたが、目は笑っていない。
「・・・・」
「何してたんだって聞いてんだよっ！！」
初めて聞く、山田の怒声だった。
「・・・ごめん、でも、これはちがくて」
「何がちがうの。俺とするの拒否して、トイレでひとりでしてたんだよね」
「・・・・」
「誰を想ってしてたの？」
えっ
山田のことを想ってしてました
なんて言えるわけない。
「・・・言えない」
「言えない？・・・俺以外の誰か、なんだ」
「え、ちがう！わかった言うよ涼介でしてた」
「見え透いたウソつくなよ！俺だったらここにいるよ。なんでこんなことする必要あるの？」
「そ、それは・・・」
「ちゃんと説明しろよ知念！」
説明できない俺は、黙り込むしかなかった。
沈黙の中、山田が突然、笑い出した。
「ハハハ、ひとつ屋根の下で、恋人に他の人を想ってされるなんて、俺は、とんだ種馬だな」
とんだ当て馬ね
そんな訂正を挟む雰囲気でもなく
「こんなの浮気と同じじゃん・・・」
急に山田の声がか細くなった。
「・・・伊野ちゃん？」
えっ、どういう意味
「伊野ちゃんでしてたの？」
山、なにを言ってる？
なぜここで伊野尾慧が出てくる？
「なんで伊野ちゃんで僕が・・・」
「だってこの前、知念、伊野ちゃんちに遊びに行って、かわいいねって抱き寄せられて、そのまま無理矢理襲われそうになったじゃん」
ちょっと待て
すごい聞き捨てならないんだけど！？
え、伊野ちゃん何してんの？
「俺がＧＰＳ付けてたから助け出せたけど、ほんとはあのままされたかった？」
伊野ちゃんが知念を・・・
どうなってんだよ
「どうなってんだよJUMPの風紀は！」
「その姿で言われても・・・」
山田が今夜初めて真っ当な指摘をした。
そう、俺たちはどうかしてる
とりあえず、未遂事件とかいろいろ気になるけど、今回の件については伊野ちゃんの濡れ衣を晴らさないと、伊野ちゃんに申し訳ない。
とばっちりごめん
（友情出演：伊野尾慧）
「ちがうよ涼介！伊野ちゃんじゃない！」
「伊野ちゃんではない・・・じゃあ、誰？」
これ以上、他の人を悪者にできない
俺は再び黙り込んだ。
「涼介、ごめん、やっぱ言えないよ・・・」
「ま・・・まさか・・・」
山田は動揺の色を隠しきれなくなっていた。
「知念おまえ、そうなの・・・あいつなの？」
「え、だ、誰だよ・・・？」
「裕翔？」
えっえええ！！！おれっ！？
その名前に激しく狼狽する俺を見た山田は、勝手に納得したようだった。
いま、なんか誤解した？
「そっか。・・・一番あかん奴じゃん」
「あかん奴って・・・」
「裕翔は最悪」
なんで俺が最悪なんだよ・・・
山田から最悪と言われたショックと、もう他の人に迷惑はかけられないという気持ちから、つい口走ってしまった。
「そ、そうだよ裕翔だよっ！裕翔でしてた！」
「まじか・・・最悪、最悪だ・・・」
「最悪は言い過ぎじゃない？裕翔はいい奴だよ？涼介みたいにこんないじわるしないし、身長も高いし」
「身長・・・」
「あ、いや、そうじゃなくて」
「知念・・・信じてたのに」
悲しげだった目から、今度は感情の色が消えた。
「そんなに裕翔が好きなら、俺が忘れさせてやる」
すごい力で腕をつかみ、トイレから引きずり出した。
「離せ痛いって」
「知念、おしおきだね」
つづく