輝く星に 心の夢を
祈ればいつか叶うでしょう
きらきら星は 不思議な力
あなたの夢をみたすでしょう
人は誰もひとり
哀しい夜を過ごしてる
星に祈れば 淋しい日々を
光照らしてくれるでしょう
「星に願いを」
山田が俺を・・・
「これでフェアだね」
知念は、俺にウインクした。
混乱する頭の中で、俺と入れ替わっても知念はウインク下手だな、と思った。
「今度は涼介が、涼介の気持ちに正直になって、自分で選ぶんだ」
知念が山田の目をまっすぐ見た。
「でも・・・」
「でも？」
「・・・裕翔は、俺のことなんか」
「は？涼介はもう裕翔から告られてるじゃん」
"山田のことがずっと好きなだけなのに"
「あ・・・」
山田と目が合い、俺はうなずく
知念に背中を押され、「俺は・・・」と言いかけた山田は、子供のようにまた後ずさりした。
「知念、別れたばかりで、俺・・・」
「りょうすけっ！！」
知念が声を荒げた。
こんな知念を見たのも初めてだった。
そして、優しい声になった。
「僕の想い無駄にしないでよ・・・ほら」
山田は俺の前に進み出た。
顔を真っ赤にしてもじもじする山田は、超絶かわいかった。
「ゆ、裕翔・・・」
「うん」
「えっと」
「うん」
「あのね、俺は」
「山は・・・」
「裕翔、手」
「え」
「手つないで」
「あ、うん、こう」
山田の手から山田の体温が伝わってくる
お互いの好きって気持ちが通じ合ったように
「裕翔」
「山」
「俺から言わせて裕翔」
「わかった」
つないだ山田の手をギュッとした
もう、この手を離しはしない
「俺は・・・山田涼介は・・・中島裕翔のことを・・・」
「うん」
「裕翔のこと・・・あいし」
「ちょっと待ったあー！！」
「え？知念・・・」
知念、どうしたの？
ここまできて
やっぱり山田は渡せない、とか言うの！？
「僕、気が変わった」
「お、おいっ、知念！」
「だって、見てらんないよ。こんな、成功確率１００％のラブラブ告白。見せつけられるの勘弁」
「いや、でも知念が」
「一応、君たち、僕の元カレ＆元恋敵だからね。やっぱ、こんなのふたりきりでやってよ」
「どういうこと・・・？」
「邪魔者は消えるね」
知念はバルコニーの窓を開けた。
夜風が一気に吹き込み、カーテンが大きく揺れる
瞬間、知念は振り向き
「じゃあ、おふたりさんお幸せに」
俺たちに背を向け、バルコニーへ飛び出した。
「知念、なに、するの・・・？」
「ちょっ、知念、ここ何階だと思ってんだよ」
知念の表情は見えない
「僕はもういらないでしょ」
「知念だめだ、やめろ！」
「ばか、死ぬなっ！」
「ゆうてぃー、そして愛する涼介・・・・バイバイ」
「知念！死ぬなっ！」
「・・・は？死なないよ」
「え」
「なんで僕が死なないといけないんだよ」
「これからもJUMPみんなで、全国のファンを楽しませるんだよね」
「お、おう」
「別れは、また会う約束、でしょ？」
知念は満天の星空を見上げた。
そのとき
星が一筋、まぶしい光を放ちながら流れた
そして、その近くの星も流れはじめ
続く流れ星は、３つ、４つ、５つ・・・
さらに、次々に星が落ち
無数の流れ星が、神秘的に夜空を照らす
それはまるで、流星のパレードのようだった。
知念が流星群に叫んだ。
「神様！僕と裕翔を元に戻してください！！」
目を覚ますと、そこは、自分の部屋のベッドの上だった。
「知念っ！山っ！・・・」
俺の声だけが、ひとりの部屋に響いた。
え・・・？
ベッドから起き上がり、カーテンを開く
東の空が白んでいた。
「朝・・・」
ベッドには山田が表紙のａｎａｎと抱き枕があった。
「夢・・・？」
そんな・・・
昨夜、俺は流星群に、山田と付き合いたいって願いをかけた。
そして、そうだ
知念と俺が入れ替わって
山田の部屋にいて
山田に襲われかけて
知念が助けてくれて
山田も俺のこと好きだったってわかって
え、全部・・・
夢？
夢だった
「ふっ」
俺は自嘲気味に笑った。
だよな・・・
入れ替わりとか、ありえない
山田が俺のことを好きだなんて、そんなことあるはずない
全部、俺の願望が作った夢だったんだ。
叶わぬ恋は片想いのまま
報われることはない
何も変わらない
ただそれだけ
涙が頬をつたうことに気付いた。
止まらない涙
両手で顔を覆う
嗚咽しながら、つぶやいていた。
「山田、好きだ」
山田・・・
愛しい山田涼介
山田のすべてが
山田の顔も、髪も、体も、手も
手
山田の手・・・？
覚えてる
俺の手が、覚えてる
手をつないだときの感触
山田の体温
ふたりの間に流れた、温かい感情を
確かに、俺は山田と・・・
じっと手を見る
そして、手を開いた
その瞬間、目は釘付けとなり、激しく心が揺さぶられた。
俺の手のひらに
黒ペンでこう書かれていた。
『ａｎａｎでオナニー禁止！チネン』
ヘタな字（笑）
俺は吹き出し、大笑いした。
知念のバカ
しかも油性マジックで書きやがって
なかなか消えないじゃん！
広いこの世界で
君と巡り逢えた奇跡
運命のドアを叩くのは、自分自身なんだ
俺はジャケットを掴むと、部屋を飛び出した。
輝く早朝の青空
せっかちなセミの鳴き声が、どこからか聞こえていた。
手のひらに目をやり、こぶしを握り締める
知念、今度はちゃんと
中島裕翔として
山田に想いを伝えるよ
俺は、朝の空気を思い切り吸って
ひとり陽光の差す道を歩き出した。
愛する人のいる場所へ
おわり