人工授精にはクロミッドではなくhMGを | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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人工授精をする際にクロミッドを使用する事が多いかと思います。クロミッドを使用すると排卵数は複数個になる事がありますが妊娠率となるとそこまで高くない事もあります。その理由としてはクロミッドによる内膜への影響が上げられます。

クロミッドよりも低用量のhMGを用いた方が妊娠率が高くなるという報告がHum Reproにありましたので紹介します。

 

方法

330名の方に657周期に人工授精を施行しております。

①hMG37.5〜75IUの低用量を用いています。334周期。

②クロミッド50mgを(Day3-Day7)使用しています。323周期。

対象は軽度男性不妊、原因不明不妊、軽度子宮内膜症患者としてます。

 

結果

妊娠率

hMG群は14.4%(48/334)

クロミッド群は9.0%(29/323)

hMH群で有意に高くなり相対リスクは1.6

 

生児出産率

hMG群は13.8%(46/334)

クロミッド群は8.7%(28/323)

hMH群で有意に高くなりリスクは1.6

 

多胎出産率

hMG群は6.5%(3/46)

クロミッド群は3.6%(1/28)

統計的有意差はなし

 

排卵前の卵胞数

hMG群は1.2個

クロミッド群は1.5個

 

子宮内膜の厚さ

hMG群は8.5mm

クロミッド群は7.5mm

 

結論

クロミッドを用いるよりも、低用量のhMGを用いた方が人工授精の妊娠率が上昇しました。

 

この結果から言える事

クロミッドは内膜が薄くなり妊娠率はそれほど高くないため、低用量のhMGを使用する方が妊娠率、出産率を上昇させる事になります。

クロミッドで結果が出ない場合には低用量hMGに切り替えた方が良いかと思います。

 

Low-dose human menopausal gonadotrophin versus clomiphene citrate in subfertile couples treated with intrauterine insemination: a randomized controlled trial 

Hum Reprod (2015) 30 (5): 1079-1088.