卵巣にチョコレート嚢腫がある場合、嚢腫がある卵巣から排卵するかどうか不安になる方もいます。嚢腫により排卵が妨げられるのではという考えもあります。この辺りはとても心配なところです。
これに関してまとめてある論文がHum Reprodにありましたので紹介します。
方法
チョコレート嚢腫が排卵に対してどのように影響しているかを調べています。
対象としては2009年9月から2013年6月まで。妊娠を望む方で、生理が順調で、片方に2センチ以上の卵巣チョコレート嚢腫がある方を対象としています。
除外対象としては卵巣へのオペの既往がある方、3ヶ月以内のホルモン療法を受けている方としています。
244名(1,199周期)を対象に、最大6周期まで排卵をエコーにてモニターしました。平均年齢は34.3才。
55.3%は左に嚢腫があり、44.7%は右に嚢腫がありました。
嚢腫の平均径は5.3cm。左右差は有意差を認めました(P = 0.024)
エコーにて排卵は以下のように確認されました。
嚢腫がない健常側において596周期(49.7%; 95% CI, 46.8–52.6%)
チョコレート嚢腫がある側において603周期(50.3%; 95% CI, 47.1–53.2%; P = 0.919)
この結果に有意差は認められませんでした。
チョコレート嚢腫の直径が4cm以上の166名の方において、6cm以上の45名の方でも同じ結果が出ました。
105名が自然妊娠となりました。(43.0%; 95% CI, 36.7–49.5%).
この論文から言えることとして
卵巣チョコレート嚢腫があっても、嚢腫があるサイドからも健常側と同様に自然に排卵することがわかりました。
また良好な自然妊娠率を示すこともわかりました。
今後腹腔内の癒着状況や両側の卵巣チョコレート嚢腫の場合はどうなるかに関しても更に評価する必要があると思います。
Hum Reprod (2015) 30 (2): 299-307.