現在培養システムは年々とても進化しており、数年前に従来の加湿型からドライ型のインキュベーターになり、そして今はタイムラプス付きのエンブリオスコープが最も高性能な培養庫として運用されています。
培養庫、培養液などの培養システムは動物実験から始まるいろいろな基礎的な研究を積み重ね、安全性、確実性に関してエビデンスを取り、慎重に人に応用されています。
培養庫の温度が何度が好ましいかは実は議論があるところです。
今回の報告では適切な温度が示されていたので紹介します。
今回の検討では培養庫の温度が36.6°C か 37.1°Cのどちらが適切か、この内容に関して前方視的に100症例検討しています。
評価項目としては受精率、胚のグレード、着床率、妊娠率をそれぞれ検討しています。
結果
1,432個の卵子を採取し、そのうち1,153個が成熟していました。ICSIを行い以下の2群に分けて培養しています。
36.6°C (n = 572) or 37.1°C (n = 581) 。
受精率は以下の通りで同等でした。
80.4% at 36.6°C and 78.3% at 37.1°C
3日目と (78.3% and 79.6%) 5日目で(53.8% and 55.8%)良好胚の割合も同等でした。
胚の利用率も同等でした。
40.0% versus 40.4%
妊娠率は37.1°Cの方が有意に高くなりました。
77.4% versus 46.4%; p = 0.029
結論
培養庫の温度は36.6度より37.1度の方が妊娠率が有意に高くなりました。(受精率や良好胚率は同等でした)
この結果から言えることとして
最適な温度はやや高めの37.1度が好ましいことがわかります。成績に関してここまでの差が出ていることは驚きですが、この結果を受け、実際のシステムを見直しをしても良いのかもしれません。
O-093 Effect of accurate temperature regulation during incubation on embryo quality after ICSI: a prospective sibling oocyte study on two incubation temperatures (36.6°C or 37.1°C)
33rd Annual Meeting of ESHRE, Geneva, Switzerland 2 to 5 July 2017