流産を繰り返して心身ともに限界という場合にはPGT-Aを強くお勧めします | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

5回移植して流産を2回しています。正直どうしたら良いか、心身ともに限界です。先生はPGT-Aに関して余り勧めないと書かれていたかと思いますがどういう時に行うほうが良いと考えていますか?

 

この様なご質問がありましたのでお答えします。

 

PGT-Aはまだ世界的に議論がなされており、今回の保険診療にも認められなかったことが示している通り国も学会も厚労省も自信を持って勧められないというスタンスであり、まだ確固たるエビデンスが出ていない状況です。

その理由としてバイオプシーによる胚へのダメージ、偽陰性、偽陽性、胚の自己修復、モザイク、長期的な予後が不明など問題が多数あるからです。

生殖医療に関する一流の雑誌でも真っ向から賛成派と反対派で議論がされておりいまだに結論が出ていません。

このThe new england journal of medicineの論文でも累積での成績は変わらないとしています。

 

PGT-Aは胚が正常か異常かを見抜く技術であり正常胚を作る技術ではありません。やるべきことは正常胚ができるための治療法を行うことです。刺激、受精、培養を再度見直し施設側が最大限努力することが正常胚を作る王道です。胚のせいにするのは簡単ですがその胚を作っているのは誰なのか、そこをよく考え自分達にできることを最大限努力することが専門家のすべきことだと思います。

 

私の個人的な意見として、流産の経験がない方に対してはPGT-Aは積極的にお勧めしません。誰にでも将来的にお子さんに何か病気が出る可能性はあります。

そして子供に何かあった場合、PGT-Aと関係なくてもPGT-Aをしたからではと考えてしまうのが親だと思います。

なるべく不要な技術は使わないほうが良いというのが生殖医療の大原則だと私は思っています。

ただ流産を繰り返して心身ともに限界という場合にはPGT-Aを強くお勧めします

我が子をこの手に抱くという夢を叶えるため今ある技術を使うべきときだと思います。