両角 和人(生殖医療専門医)のブログ -3ページ目

両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

子宮内膜症があると体外受精の成績に影響を与えるとの報告が以前からあります。

今月号の論文に影響が出ると報告がありましたので紹介します。

 

深部浸潤型子宮内膜症(DIE)や子宮内膜症嚢胞と診断された女性における初回体外受精または顕微授精後の累積出生率(CLBR)を調査しています。

 

対象者は 2019年1月から2022年10月の間に、初めてのIVF/ICSI治療を受ける25歳から39歳の不妊症の女性1,040名でこのうち、234名(22.5%; 95%[CI], 20.0–25.0)の女性が、治療を開始する前のエコーでDIEまたは内膜症性嚢胞と診断されました。

 

結果: 全体のCLBRは、1,040名中426名(41.0%; 95% CI, 38.0–44.0)。

DIE、内膜症性嚢胞を持つ女性は、疾患を持たない女性よりもCLBRが低下しました(234名中78名, 33.3%; 95% CI, 27.3–39.4)。

DIE、子宮内膜症性嚢胞を持つ女性の累積出産率に対する相対リスク(RR)は0.77; 95% CI, 0.63–0.94であり、年齢、BMI、AMH、刺激プロトコ-ル、および胚移植日で調整した後の補正リスク比は0.63; 95% CI, 0.48–0.82でした。両グループ間で、採卵された成熟卵子の数、受精率、または良好胚数には違いはありませんでした。

 

結論: 経膣エコーによって診断されたDIE、内膜症性嚢胞の存在は、初めての体外受精の治療を受ける女性の出産率を低下させると言えます。

 

この結果から言えること

深部浸潤型子宮内膜症(DIE)や子宮内膜症嚢胞を持つ女性が、体外受精による治療を受けた場合、これらの疾患を持たない女性と比べて、累積出生率が低いことを示しています。

体外受精を検討している女性にとって、治療の時期を考慮する上で重要な情報です。

つまり子宮内膜症やチョコレート嚢腫がある場合、成功率が低くなる可能性があることを理解し、治療を早めに行うことが必要と言えます。

 

Fertility and Sterility® Vol. 121, No. 5, May 2024

Endometriosis diagnosed by ultrasound is associated with lower live birth rates in women undergoing their first in vitro fertilization/ intracytoplasmic sperm injection treatment

当院ではご主人の移植への立ち会いを許可しています

他院ではほとんどしておらずかなり珍しいことかと思います

ただ移植は奥様が一番緊張する時であり

ぜひご主人が隣にいてあげてリラックスをさせて欲しいと思います。

以前調べましたが立ちあわれた方が妊娠率が高くなっていました。

診察の際にスタッフに伝えて頂けたら詳細をお伝えします。

 

 

体外で培養することが子供に何らかの影響を与えているとの報告が以前から多数あります。

今回長く培養すればするほど大きい子供が生まれてくるとの報告がありましたので以下紹介します。

今月号の論文からです。

 

2014年から2019年までの期間における、受精後2〜7日間の凍結胚移植を受けた女性における、出生時体重過大(LGA)児のリスクとの関連を調査した後ろ向きコホート研究です。

 

研究群の18.2%にあたる33,030件のFETサイクルがLGA児を出産しました。

凍結日が2日目の場合のLGAリスクは13.7%であったのに対し、3〜7日目で凍結した場合のリスクはそれぞれ14.4%、15.0%、18.2%、18.5%、18.9%と増加しました。

特に、5〜7日目で凍結した場合、補正相対リスク(aRR)は1.32から1.42まで増加しました。

その他、多産(3名以上産んでいる)や、正常体重と比較してBMIが35 kg/m²以上の場合など肥満もLGAリスクと関連がありました。

また、アジア人、黒人、ヒスパニック、ハワイ・太平洋諸島系の人々は、白人に比べてリスクが低い要因とされました。

この研究は、FETとLGA児との間の関連について新たな検討すべき事があると指摘しています。

 

凍結胚移植を受けた女性において、胚の凍結を行う日にちが出生時体重過大児のリスクに影響を与える可能性があると示唆しています。

具体的には5日目以降に胚を凍結すると、LGA児のリスクが高まることが明らかになりました。

また母体の肥満度や多産もLGAのリスクと関連しており、これらの要因を考慮に入れた上でのリスク評価が重要であると結論付けています。

 

Fertility and Sterility® Vol. 121, No. 5, May 2024

Association of duration of embryo culture with risk of large for gestational age delivery in cryopreserved embryo transfer cycles

医者になると決めたのは高校1年生の時でした。

親友の影響で自分も医師を目指そうと思いました。

 

ただ医者にならなければどうしていたのかと

どういう人生があったのかと親しい先生同士で話す機会がありました。

 

医者は当直が多く、責任も多く、

頑張っても教授が最高だし

もっと別の人生があったのかもね、

医師よりもより楽しい人生が待っていたのではという先生もいました。

 

確かに医学部に入るとほぼ全員が医師になるし

医学部に入ることを決めるのが高校生なので、

他の学部よりかなり早い段階で人生を決めるわけで

医師にならないで他の分野に進んだ方が良かったと

医学部に入り後悔する方もいるようですが

私は正直医師以外の人生は考えられません。

 

何度人生を繰り返しても医師になると思います。

それは人のためになる事がしたいし

何より生殖医療が心から好きだからです。

当院ではオンラインで診療の相談をおこなっております。

今の施設の方針に納得がいかない

他に良い治療方法がないか聞いてみたい

腹腔鏡手術に関して具体的に聞いてみたい

卵子凍結に関して具体的なことを聞いてみたい

この様な相談が多く寄せられます。

 

日曜日にご自宅からお二人で相談を受けられます。

待ち時間はゼロで自宅からなのでリラックスして聞けるかと思います。

必ず院長が対応します。

お申し込みはこちらから

 

 

患者さんで福島出身の方が結構いて時々福島の話をします。

かなりローカルな話なので実に盛り上がります。

 

また私の卒業した中学や高校や大学の後輩もいて

なんだかとても嬉しくなります。

先日もご主人が福島高校の方がいて教えていただき

なんとも言えなく幸せな気持ちになりました。

以下朝日新聞デジタルからです

総務省は4日、4月1日時点の15歳未満の子どもの数が前年より33万人少ない1401万人で、43年連続で減ったと発表した。総人口に占める割合も前年比0・2ポイント減の11・3%で50年連続の減少。いずれも比較可能な統計が残る1950年以降の過去最低を更新し、75年に2723万人で24・3%を占めていた子どもの数は、50年でほぼ半減した。

 

 

 

体外受精の保険適応が始まり保険で治療を受ける方が多くなりました。

現在10人に1人は体外受精で生まれています。保険をより浸透させルールをわかりやすくし、何より年齢制限や回数制限を外すことが少子化対策には欠かせないことだと現場の医師として感じます。

年齢や回数が超えたので治療を諦めます。治療のお金を国が出してくれるならもう1人産んでも良い、そう答える方が多くいます。是非国は再検討をお願いします。

主人がお酒もやめずタバコも減らしてくれません。私が言うと機嫌が悪くなります。何とか方法はないでしょうか?

 

このようなご質問がありましたのでお答えします。

 

この様なご主人がいることは事実でありかなりの奥様が苦労されています。

過去に動画を作成しましたのでこちらを見ていただく事が良いかと思います。

 

 

 

近年PPOSが広く行われております。この今月号の論文ではPPOSとアンタゴニスト法を比較検討しています。今月号の論文です。

 

体外受精中の排卵抑制において、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)とアンタゴニストの効果を比較しました。

対象は2020年から2023年までの18歳から44歳の患者で、自己卵子を用いたIVF治療を受けた418人がMPAプロトコル、419人がアンタゴニストを受けました。

結果、MPAグループでは早期排卵の発生はゼロであり、アンタゴニストでは1.2%でした。

採取卵子数、胚の質、妊娠率において両グループ間で差はありませんでしたが、MPAグループは約491ドル低く、通院回数が1回少なく、サイクルあたりの注射数が平均5回少ないという追加の利点がありました。

この研究は、MPAがIVFサイクル中の排卵を効果的に抑制し、同等の成績を示しつつ、患者のコスト節約と便利さの向上を実現していることを示しています。

 

PPOSはアンタゴニストと同等の効果を持ちながら、早期排卵の発生を完全に抑制する可能性があることです。さらに、MPAを使用したグループは、治療費用が少なく、通院回数が少ない、そして注射の回数が少なくて済むなど、患者にとっての利便性が高いというを示しています。

 

ただPPOSには大きな欠点があり新鮮胚移植ができないことです。高齢や卵巣機能が低下している場合凍結に向かない卵子があり融解時に変性をしたり拡張しなくなります。このような場合レトロゾールやアンタゴニスト法を選び新鮮胚移植を目指すべきです。また凍結胚移植は子供への負担も増えるという報告もあります。

そしてPPOSは費用が安いと書かれていますが凍結融解の費用は必須となるし移植が1ヶ月先になるなど時間的なコストも考えると必ずしも患者にとってフレンドリーな刺激方法とは言えません。

そして1番の懸念点は多くの医師がPPOSしか選ばないことです。診察回数が制限された保険の弊害であり若い先生はPPOSしかできないと思われます。

生殖医療専門医として一番優先すべきは患者さんに合わせた治療法でありあらゆる刺激を知った上で最適な刺激法を選ぶことです。

 

Fertility and Sterility® Vol. 121, No. 5, May 2024

Oral medroxyprogesterone acetate for the use of ovulation suppression in in vitro fertilization: a cohort trial