ファースト・ラブ
ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー
そのためだった、キョーコは東京に行って、高校に行きながら芸能界で芝居をすることを決めた。
まあ、理由はそれだけではないのだが。
久遠が日本にきて三年は過ぎ、その実力が認められて、彼は今や実力派俳優として売れていた。
そのせいか最近、いや、ここ数年の久遠は忙しくって、キョーコはあまり会えなくなっていた。
だから、寂しいさを感じずにはいられない。だけど、忙しいということは久遠が成功しつつあることだと
キョーコはわかっていた。わかっているけれども、頭とは真逆に心は孤独で占めそうなる。
離れたくない。そばに居たい。そばにいてほしい。
心はそう訴えるばかりで・・・だから、あえてその道の選択をした・・・芸能界でも側にいたいと願うばかりに。
「キョーコ!」
芝居の練習をしていると襖を勢い良くあけ、金髪の青年が部屋に入ってくる。
キョーコの母親は仕事で忙しく、殆どこの旅館「松乃園」の板長と女将に預けられているキョーコ。
そして、彼はお世話になっているこの旅館の長男の不破松太郎で通称ショータローであり、
キョーコの幼馴染であり、彼女にとって初恋の相手でもある。
「あ、どうしたの?ショーちゃん。」
珍しいねとキョーコは言うとショータローは真顔で
「お前、東京にいくって本当なのか?」
と、聞いてきた。
「ど、どうして、知ってるの?」
ショーちゃんにはまだ話してないのにと頭の中で考えながら、キョーコは聞き返す。
因みに芸能界に入るといってあるのは久遠だけ。
「悪い、お前とお袋たちが話してるのを聞いちまった。」
聞き返されたショータローはそう言って頭を掻く。
「そうか・・・うん、そうだよ。東京の高校にいくつもりなの、私。」
「そうか。それが訊きたくなっただけだ。じゃあな。」
ショータローはそう言い、部屋を出て行った。
「ホント!?本当に文化祭に来れるの!?」
そう言って嬉しそうに手を合わせるキョーコ。
彼女の目の前には久遠が微笑んでる。
「うん、偶然にロケが重なって、なんとか時間作れそうだから。」
「うれしい・・・!!」
久遠の言葉にキョーコは本当に嬉しそうに笑う。
その笑顔に久遠はキョーコを抱き締めたい衝動に駆られ、抱き締める。
一瞬で真っ赤になるキョーコ。だが、抵抗する理由もなく、大人しく抱き締められる。
すると久遠はキョーコを少し離して、真顔でキョーコを見つめ出し、
「キョーコ、聞いてほしいことがあるんだけど・・・。」
「な、なに?////。」
真剣に自分を見つめるものだから、もしかして・・・?なんて期待をキョーコは抱く。
「キョーコは・・・俺のことをどう思ってる?」
「そ、それは・・・////。」
「俺は・・・君が好きだよ。キョーコも同じ気持ちでいてくれると踏んでいるんだけど。」
「/////。」
久遠の告白にキョーコの顔はさっきほどよりも真っ赤。そして、彼の言葉にゆっくりと素直に頷き、
それをみた久遠は愛しそうにキョーコを抱き締めなおしたーー。