ファースト・ラブ
ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー
そして、文化祭当日。
キョーコはドレスを纏い、長い黒髪をキレイにセットする。
「最上さん、終わった?」
「あ、はい。終わりました。」
顧問の先生の声を聞いて、キョーコはドアをあけ、顧問の先生の前に現れる。
「似合ってるわ。あ、でも、最後の仕上げしなくちゃね。」
そう言って顧問の先生はにっこりと笑い、
「え・・・?」
意味が分からないキョーコは首を傾げた・・・。
その数十分後、久遠はやってきた。
その容姿の上、女性・・・いや男性までも目を奪われていく。
キョーコと会うときは、いつもコンタクトを外し、ブロンドの桂を被っていて、本来の姿に近い状態でいるときが多い。
そのため、今の久遠は誰がみても「敦賀蓮」だとは思いもしないだろう。
「久遠!」
久遠がちょろちょろと学校内をみていると誰よりも愛しい声が自分を呼ぶ。
だから、振り返ったが、久遠は一瞬にして目を奪われた。
彼の目の前には、美しいジュリエット。
「キョーコ・・・だよな?」
彼女を見て、久遠は確かめるように聞くと
「うん、みて久遠、私シンデレラになった気分よ!」
鈴木先生って魔法使いだわ!!とキョーコは瞳をキラキラさせ、興奮気味にいってきた。
鈴木先生とは先ほどの顧問の先生。
「ああ、本当にシンデレラみたいだ・・・。」
キョーコの美しさに心からそう思い、久遠は感想を言い、彼女を抱き締める。
途端にキョーコの真っ赤になり、
「・・・く、くおん/////?」
うまく反応できないでいると、久遠が自分から腕の力を弱め、
「とても綺麗だよ。」
無意識に、これでもか!と言うぐらい神々しい微笑みである、彼の破顔をみせてくる。
その微笑みにキョーコは思わず俯いて
「あ、ありがとう・・・///。」
頬を染めて礼を言う。
「じゃあ、行こうか?」
「うん・・・///。」
久遠に言われるまま、頷いて、手を握られ、二人は体育館へと入っていった。
<それでは、演劇部による「ロミオとジュリエット」です。>
決められた係りの人がそう言うと静かにまくがあいた・・・。
そして、出てくる、ジュリエットであるキョーコが。
ジュリエットの美しさに男性たちは息を飲んだ。
それはショータローも同じで・・・自分の見たものが信じられなかった。
舞台に立っているのは、自分の知らないキョーコに思えて。
その瞬間、ショータローはキョーコを初めて「女」として、異性としてみた・・・。
「ロミオ様、酷いわ!全部一人で飲んでしまって、私には一滴も残してくださらないなんて・・・!!」
劇が終わりに差し掛かってきた。
キョーコはロミオ役の子の側に膝をついて台詞をいい、
「ああ、もしかしら、この唇にまだ毒が!?」
そう言うとキスはしていないが、人からみればしたように見せかける。
「ああ、神はまだ私を黄泉に連れてってはくれないのね・・・。」
ポタっとキョーコの涙がロミオ役の子の頬に落ちる。
「これは!?ああ、なんてうれしいこの短剣・・・。」
ロミオの役の子の腰から短剣を見つけ、キョーコは鞘を抜き、自分の胸を刺した。
「さあ・・・このまま、私を死なせておくれ・・・。」
キョーコはそう言って、ロミオの役の子の横に倒れた・・・。
照明は落とされ、幕が下りて、劇は終わりを告げが、同時に拍手が沸きあがった。
そして、その幕の裏では、キョーコはすぐに起き上がって、ロミオ役の子と嬉しさのあまりに抱き合った。
こうして、劇は大成功に終わった。
「久遠、次どこいく!?」
その後、制服には着替えているが、メイクがそのままのキョーコが
文化祭のパンフレットを片手に笑顔で久遠に聞く。
「キョーコの行きたいところでいいよ。」
だが、久遠はキョーコが行きたがるならどこでもいいらしい。
「じゃあね・・・。」
と、キョーコはうーんと唸り、じゃあここにいこう?と場所を指差す。
久遠は微笑んで頷き、二人はその場所へと歩き出した。
そんな二人の後を付けている人物に気付く事もなく・・・。