「坊」の恋

<sisen-B->

「はぁ・・・。」

『きばぐれ』の収録が終わって僕はいつもどおりに「僕」を終わらせようとしていた。

でも、思わぬ人物と遭遇。

僕の目線の先には、まだブラックホール状態の敦賀くんがまた隅っこに座っていた。

「よ!」

だから僕は声をかけたんだけど・・・。

「・・・君か。」

どうやら、かなり深刻なものだったらしく、僕もみても表情は一切晴れない。

「どうしたんだい?また悩み?」

「・・・悩み・・・ああ、この場合、悩みだな・・・。」

「なんだい?僕に話してごらんよ。」

そういうと彼は僕の顔をみて、

「君は・・・俺が好きな子がいるって知ってるだろ?」

「ああ、知ってるよ。高校生の。」

「そのこが、最近・・・俺を避けてる気がして・・・。」

「え!?なんでまた!?」

「知らない・・・俺がなにかしたのかと思って、思い返してみたけど、何もしてないし・・・多分・・・。」

「多分って・・・もしかしたら、何かしたかもってことかい?」

「そうしか考えられない・・・。」

彼はそういうとたちまち、暗闇がこくなった。

「そ、そうとは限らないじゃないか!!ほら、もしかしたら、何かあって君にあうのが気まずいだけなんじゃないかな!?」

慌てて僕なりにフォローにしたつもりだったけど、

「・・・それ、フォローしてるのか?」

「うっ・・・。」

まったくフォローになってなかった。

「だいたい、その何かってなんなんだ?それが分からないとどうしようもだろう?」

「そ・・・それは・・・。」

確かにそうなんだけど!え、えっと・・・!

「ほ、ほら!!もしかしたら、その子、君への恋心に気付いたのかもよ!?」

「え・・・!?」

敦賀君が驚いて、

「今・・・なんて言った・・・?」

「え・・・!?」

僕も自分の言った言葉に驚いた。

「え・・・と・・・。」

「俺への恋心に気付いた・・・?」

「い、いや!こ、言葉のあやだから・・・!!本気にしないほうが・・・!!」

「そ、そうだよな・・・。」

「そ、そうだよ!!」

「でも、もしかしたら、そうかもしれないんだよな・・・?」

「え・・・!?い、いや・・・その・・・。」

すごい期待の目でみる敦賀君。

「ぼ、僕は彼女にあったわけじゃないからな・・・な、なんともいえないよ、うん。」

本人にあったこと無いんだし、わかるわけないよ。

「そうか・・・じゃあ、今度紹介する。」

「え・・・!?」

「会えばわかるだろう?君は俺の本性見破ったくらいだし・・・。」

「い、いやでも・・・!」

「だめか・・・?」

「い、いや・・・!!よ、よろこんで会わせてもらうよ!!」

「・・・よかったっ。」

パァと晴れた顔をする敦賀君。

「じゃあ、今度連れてくるよ。」

「う、うん。」

「君、こんど何時ごろ時間ある?」

「え・・・と・・・来週の火曜かな・・・。」

「そっか・・・あ、そういえば、君のちゃんとした名前聞いてなかったね。」

「え・・・!?」

「君、なんて名前なんだ?」

「え・・・と・・・。」

やばい!かなりやばい!!僕、ピンチ!!

「さ、最上恭介だよ!!」

「そっか、よろしく。最上くん。」

「う、うん!!」

「じゃあ、俺はこれで。」

「うん・・・。」

彼はそういって、立ち上がり僕に手を振りながら去っていった・・・・。

「どうしよう・・・。」

本当にどうしよう・・・。

「私、どうしたら・・・いいの?」

「坊」の頭をとって、『私』は一人呟くしかなかったーー。