キョーコはふわふわした感覚の中、幸せを感じていた。

朦朧とした意識の中、普段は絶対に言えないことを蓮にねだる。

行かないで、そばにいて、と。

「…分かった。だから、最上さんは寝て…?」

それを聞いて蓮は嬉しそうな表情を出し、キョーコの手を両手で包んで、

「うん…。」

彼の言葉にキョーコは素直に頷くとゆっくりと目を閉じて眠った。

「お休み、最上さん…。」

蓮はキョーコの頭を撫でると彼女の額にゆっくりとキスを落とした…。



「…?ここは…?」

朝、キョーコは目が覚めたが、今自分がいるところが一瞬わからなくて起き上がると、

「…!?つ、つ、敦賀さん!?」

なんと蓮が自分の手を握りながらベッドサイドで寝ていた。

「な、なんで私敦賀さんの家に!?」

何が何なのかキョーコには分からない。

ただ分かるのは、蓮に迷惑をかけてしまったことだ。

「つ、敦賀さん起きてください!」
「…う…ん…。」
「敦賀さんってば!」

揺すってキョーコは彼を起こす。

「…最上…さん?」
「す、すみません、敦賀さん。起こしてしまって…でも私、ご迷惑をおかけしたみたいなので謝ろうと…。」

彼が起きたため、キョーコは謝った。

「あ…いや…いいんだよ?気分は悪くない?」
「え…?気分ですか?」
「…覚えてないの?」
「…?何をですか?」

キョーコはどうやら意識を失ったあとのを覚えてないらしく、

「君、熱があったんだよ?だから倒れたんだ。」
「ええ!?」

証拠にキョーコは驚いて、

「す、すいません!ご迷惑をおかけして…!!」
「ストップ!」

土下座しようとしたら蓮に止められた。

「謝らなくていいから。俺が勝手にやったことだし…。」
「で、でも…!」
「いいだよ。気にしないで。」

蓮は微笑むとキョーコの頭をポンポンとするので、キョーコはトキメいたが、

(…あ…。)

昨日のことを途端に思い出して、

「あ…あの…敦賀さん…。」
「うん?」
「彼女さんは…怒らないんですか…?」
「え…?」
「ただの後輩とは言え…私を家にあげて…彼女さんは怒ったりしないんですか…?」
「…!?」
「普通は怒りますよね…?だから…もう、私にこういう事をするのは止めてくださいね…?」

彼女の笑顔の表情とは裏腹に、その心はズキズキと痛んでいた…。