時間をさかのぼり、ラブミー部の部室。

「お姉さま、これ差し上げますわ!」

マリアが小さなお香を彼女に差し出した。

「これは…?」

小さなお香を見てキョーコは聞くと、

「これは夢の中で願いが叶うお香ですわ、お姉さま!」
「願い…?」
「はい!効果はバツグンでしたわ!だって蓮さまが…きゃ!」

マリアはうっとりする。どうやら使ったようだ。

なんの夢を見たのかは、あえて聞かないことにしよう。

「どんな願いでも…?」
「…あ、はい!基本的には!」
「…?基本的には?」
「はい。例えば、お姉さまが好きな方と両想いになる夢を見る願いにしたと考えましょう。」
「うん…それで?」
「その後、好きな方と両想いになると夢は見られなくなるのですわ。」
「そ、そうなの?」
「はい。あ…それで使い方をお教えしますね?使い方は簡単ですわ!ただ寝る前にお香を立てて、希望の願いを思い浮かべるだけですわ。」
「え…?声に出さないの?」
「はい。出さなくていいのですわ。そう説明に書いてました。」
「…あ、本当だ…。」

新品のお香には確かにそう書かれていた。

「ありがとう、マリアちゃん。」
「いいえ!お姉さまが元気にいてくれれば私はそれでいいのですわ!」

マリアは天使のように笑う。

キョーコはそんな少女の頭を撫でるとお礼をもう一度言った…。



それから、キョーコはあの夢を見た。

蓮と両想いになる夢を。

マリアの言っていた通り、両想いになると、お香はただのお香となったが…。

ちなみに。

実は蓮もこのお香をマリアにプレゼントされ、使った。

ただ、マリアが説明する前に社が来て、時間が押していると言うことで、去ってしまい、効果のことは知らなかった。

だから、あの不思議な夢はお香による効果である。

どうしてキョーコの様子が可笑しいのかを考えていたのだろう。

結果的に、それを知りたいと考えて、お香がそれを叶えた。

実際、夢の中の彼女は、キョーコが言えない苦しい気持ちを吐いている。

そう…。

全てはこのお香から始まった。

これが無ければ、二人は両想いにならず、ずっと両片想いの状態かも知れなかった。

つまり、マリアがキューピットである。

「え!!俺は!?」

と言う社はほっとくことにしよう…。



おわり