「…あ。敦賀さんじゃあないですか。」
落ち込みながら、蓮が廊下を歩いていると、奏江と遭遇。
彼女もチョコレートを配っていた。
「こんにちは、琴南さん。」
「こんにちは。あの…。」
「何…?」
「あの子に会いました?」
「え?うん…会ったけど?」
「…やっぱり…。」
奏江は蓮の手元を見ると何かを考える仕草をし、
「敦賀さん。」
「何かな?」
「自分でも、お節介だと思うんですが、あの子、義理チョコ以外に本命チョコを持ってきたんです。可愛らしい小さな紙袋に入ってて、可愛らしいラッピングでした。」
「…え?それ、どういう意味?」
「そのままの意味ですよ?誰に渡すのか聞いたら、敦賀さんに渡すって言ってたんですけど、このチョコレートの山を見たら、渡す気がなくなってしまったみたいですね。」
奏江の話は衝撃的だった。
(俺に…本命を…?)
耳が赤くなるのを感じる。かなりヤバい。
「…もらうなら、今ですよ?あの子、自分で食べそうなので。」
「…!」
「もうそろそろ、配り終わると思うんで、部室へどうぞ。一応、鍵もかけてくださいね?」
にっこりと奏江は笑うと、これは貸しですよ?と言うのを忘れない。
「…わかった。そのうち返すよ。ありがとう。」
蓮はお礼を言うと、早歩きで部室へと向かったのだ…。
部室についた蓮は、ノックをするが、返事がないので、ドアノブを回し、中に入る。
「これか…。」
テーブルの上には、ピンクの可愛らしい紙袋があった。中身を確認しても、奏江の話と一致。
「開けてもいいよな…?」
開けたくなって、蓮はウズウズし、開けようとした時だった。
ドアが開く音がして、蓮はそっちを見るとキョーコが立っていて、
「つ…敦賀さん…?どうし…。」
どうして?と聞きたかったのだろうが、蓮の手元を見ると、
「きゃ…きゃああああ!!」
思い切り叫んで、蓮の手元を指差す。
「ど…どどどどどうして!?それを敦賀さんが持ってるの!?」
「え?テーブルの上にあったけど?」
「え…ええ!?なんで!?どうして!?は!!まさか、モー子さんが!?そ、そうだわ!!絶対そうだわ!!私ロッカーにしまったのに!!」
ああ!!とキョーコは頭を抱えていたが、ガサガサと何かを開ける音がして、そっちをみると、
蓮がチョコレートをひと粒、食べている姿が目に入った…。