蓮と一緒に住むことにしたキョーコ。
すぐに彼女はマンションも引き払うことにした。
つまり荷造りをするのだが、今まで買った“不破尚”のCDが大量にあって、キョーコはため息が出る。
不思議と胸が苦しいとは、もう思わなかった。まだつっかえるものはあるものの、きっとそれは…。
「敦賀さん…。」
彼のおかげだとキョーコは思う。蓮に自分は救われた。
あのまま1人でいたら、きっと自分はここにいないことだろう。
「何かお礼しないとな…。」
そうは思っても、また何かを奢ろうとすれば、またコーヒーだけでいいと言われそうだ。
「手作りのほうがいいかな?だとすると…。」
うーんと唸って考え出す、キョーコ。
なんと言っても、相手はゴージャススターと言っても、過言ではなさそうな相手である。
きっと身につけているものも、贈り物も、きっとブランド物だろう。
(…そうなると何を贈ればいいんだろう…。)
キョーコは途方にくれる。何を作って贈ればいいのか、さっぱりだ。
「こっそり、後で何がほしいか聞いてみようかな…。」
さっぱり分からない彼女は後で彼に聞いてみる事にし、問題のCDをダンボールに詰める。
流石に捨てるのはどうかなので、売り飛ばすつもりだ。
こうしてキョーコの荷造りは済み、その翌日に蓮が迎えにきてくれた。
こんなに早く、このマンションから出るとは思わなかったが、キョーコは有り難かった。いつまでも、こんなとこに居たくない。
「…荷物はそれだけ?」
「はい。後は全部、売っちゃいました。」
彼女が手に持っているのは大きな鞄ひとつのみ。
「売っちゃいましたって…それ以外全部?」
「はい、売っちゃいました。過去を清算したかったので。」
そう言う彼女は苦笑いを浮かべ、そんなキョーコに蓮はホッとしたように優しく微笑むと彼女の頭を撫で、その手にある鞄を自分が持つ。
「あ…じ、自分で持てます!」
「ダメ。女の子に荷物なんて持たせられない。」
「で、でも…!」
「いいから。」
押し切ると彼女は諦めたのか、肩を落として、申し訳無さそうな表情をする。
蓮はそんなキョーコに苦笑いを浮かべると、もう一度頭を撫でて、玄関から出た。
慌てて、キョーコも外へと出ると玄関のドアの鍵をしめ、鍵をポケットにしまう。
「行こうか。」
「はい。」
完全に部屋を後にするキョーコ。もうここには、二度と足を踏み入れない。
そして、蓮との新たな生活が彼女を待っているのだった…。