キョーコは固まっていた。蓮のマンションを目の当たりにして。

(こ…こんなに広いなんて…!!)

その階がまるまる一部屋の高級マンション。

彼女が固まるのも分かる。庶民には足を踏み入れることもないだろう。

「どうかした?」

玄関のドアを開けながら、蓮が首を傾げ、

「い、いえ…なんでもありません。」
「そう?さぁ、どうぞ。」

中へと彼女を招き入れた後、家の中の案内をする。

(や、やっぱり、広いっ。)

一人で住むには余りにも広すぎて、キョーコは目眩がした。これからここに住むと言うのに…。

「あ、あの…や、家賃っておいくらですか?私も少しは払いたいので…。」

きっと、数十万は伊達ではないと思いながらも、キョーコは恐る恐る尋ねれば、蓮は眉間にシワを寄せ、

「払わなくていいんだよ?そもそも家賃なんてないんだから。」

そう答えた。つまり、ここは購入済みと言うことである。

「え…ええ!?」
「そんなに驚かなくても…。」
「だ、だって…!つまり所有してるってことですよね!?」
「うん。元々所有してたのは、俺の事務所の社長だけどね。」
「そ、そうなんですか?」
「うん。で、つい最近、正式にここを買い取っただよ。」

若いうちに、こんな広いマンションを買い取るなど、かなり稼いでいるらしい。

「すごいですね。私が買うとしたら、かなりの時間をかけないと無理です…。」
「いや、女性が買うような物件じゃないから此処は。」
「それは…そうですけど…。」
「…とりあえず、これで最後の部屋。君がこれから使う部屋だよ。」

蓮は苦笑いを浮かべ、最後の部屋のドアを開けた。

キョーコの目に飛び込んできたのは、全体的にピンクの部屋。明らかに女の子の部屋だと空間が訴えている。

ピンクのカーテンにカーペット、寝具もピンク。家具は白で統一感があって、シンプルながらもセンスがいい。

「あ、あの…これはどういう…。」
「ああ、君が過ごしやすいようにしたんだけど…好みじゃなかった?」
「い、いえ、む、むしろ好み過ぎて怖いくらいで…。」
「そう?良かった。」

キョーコの言葉を聞き、蓮はホッとしたように笑えば、

「じゃあ、今日はもうお休み。もう遅いからね。話はまた明日にしよう。」
「は、はい。お休みなさい。」

彼女の頭を撫でたあと、その場から去っていく。

それを見送ったキョーコは、部屋に入り、部屋をを見渡すと、やはり女の子らしい部屋で、

「ふかふか…スプリングもいい感じ…。」

とりあえず、ベッドに座れば、感想が口から出て、寝そべる。

そうしているうちにキョーコは夢の中へと飛び込んだのだった…。