「お、おはようございます…。」
翌日の朝、キョーコは見慣れない天井と部屋に一瞬だけ目を白黒させたが、頭の回転の早い彼女はすぐに理解して、ベッドから起き上がったのだ。
「おはよう、よく眠れた?」
「は、はい。」
キョーコがリビングへ行けば、すでに蓮は起きていて、彼はコーヒーを飲んでいる。
「そう、よかった。コーヒー飲む?」
「は、はい。いただきます。」
「じゃあ、そこに座ってて?」
「は、はい。」
言われるまま、テーブルの近くに正座で座るキョーコだが、明らかに彼女は緊張しているので蓮は苦笑いして、キッチンに向かう。
一方、リビングで待つことになったキョーコは緊張で落ち着かないのか、キョロキョロし始める。
「最上さん。」
「…!!」
あまりにもキョロキョロ見ていたキョーコは急に蓮に呼ばれて、心臓が口から出そうなほど驚く。
「ごめん、驚かせたかな?」
「だ、大丈夫です。」
「そう…?砂糖とミルクはいるかなって思って、聞きに来たんだけど…。」
「は、はい。お気遣いありがとうございます。」
「…そんなに気を使わなくてもいいのにな…。」
「へ…?」
「いや、何でもない。すぐに戻ってくるから。」
蓮はまた苦笑いを浮かべて、キッチンに戻っていき、数分もしないうちにこちらに戻ってきた。
「…どう?苦くない?」
「大丈夫です。すごく美味しいです。」
「インスタントだけどね。」
「い、いえ、本当にすごく美味しいです!」
首を振って、キョーコはお世話でないと笑顔で言えば、
「ありがとう。」
とろけたような笑みでお礼を言われる。
それをみた彼女は胸がドキンと跳ね、顔を真っ赤にした。
「…?どうした?」
「にゃ…!にゃんでもにゃいです…!!」
さらに蓮に頬を触れられそうになって、キョーコは逃げるようにコーヒーのカップを持ったまま部屋に戻っていく。
(…な…なに!?今の…!!)
バタンと部屋のドアをしめ、キョーコは混乱する。心臓の音が煩く、顔が熱くて堪らない。
(な、なんの!?あの笑みは!!そ、それに…!!)
頬に触れそうになった大きな手を思い出して、さらに心臓が鼓動して、顔を熱くなり、混乱する彼女。
キョーコに答えなど分かるはずがない。本人は自覚もなければ、無意識にしたことなのだから…。
その証拠に、リビングに残された蓮は固まったいた。
キョーコに逃げられた事にショックを受けて。
何故ショックを受けていることすら、分かっていないだろうが。
こうして、本格的に蓮とキョーコの始まったのだった…。