「か…変わりにと言われましても…。」

変わりにマネージャーをやってほしいと言われたキョーコだが、すぐに戸惑った顔をした。

当たり前だ。彼女は事務所の社員でも何でもないのだから。

「実は社くんがな、実家の急用で休みを取りたいらしいんだ。」

そんなキョーコにローリィは説明をし始め、

「もちろん、変わりのマネージャーをつけようと思ったが、生憎さま手が空いているが人間がいなくてな…困り果てていたら、こいつが君の話を持ち出したんだ。」
「な…!?」

蓮が驚いたように声をあげた。当然である。完全なるデタラメだからだ。

「実は一緒に住んでる子がいて、セキュリティーが高いとは言え、置いていくのは心配だから、その子をマネージャーのかわりにして連れていきたいとな。」

更なるデタラメを言うローリィ。だが、一部は真実は混ざっていた。

蓮はキョーコを1人にさせたくないと思っていたから。連れていけるなら連れていきたいと思っていたから…。

それゆえ、心を曝露されたような気持ちになった蓮は恥ずかしくてローリィを睨むが、彼はそれをスルーし、

「どうだね。引き受けてくれないか?もちろん、バイト代は出す。」

彼女に訪ねると、キョーコは蓮をチラチラ見ながら、もじもじと恥ずかしそうにして、

「あ…あの、で、でも足手まといになるかもしれないですし…。」

不安そうな表情を浮かべたが、

「大丈夫だ。君の役目は蓮の食事管理だからな。」
「へ…?」

つい間抜けな声を出す。食事管理とはどういうことだろうかと思った。

「実はこいつ、ほっとくと2日は何も食べない人間なんだ。」
「…えっ。」
「社くんが口酸っぱく言うから、食べるには食べるんだが、食べても女性の平均くらいしか食べれない。」
「で、でも…。」

彼女にとってはイマイチ信じられない話だった。朝ご飯もお弁当もちゃんと食べてくれたからである。

「君は朝食と弁当を作っているらしいね?」
「は、はい。でも、どうしてご存知なんです?」
「社くんから聞いたんだ。どうやら綺麗に平らげるそうだな?」
「はい。美味しいって言って食べてくれます。ね、敦賀さん。」

突然、話をふられた蓮はドキもするも、キョーコの手料理が美味しいのは確かな事で、

「う、うん…。」

彼が頷くとローリィがニヤリと笑い、

「しかしな、最上くん。それは君が作るからであって、普段なら残すんだ。」
「の、残すんですか…?」
「困ったものだ。世の中には食べたくても食べれない人間がいると言うのにな…。」
「そ、そうですよ!敦賀さん!!出された物はちゃんと食べないと!!」

キョーコがローリィから蓮へと視線を変える。

「い、いや…でも…。」
「でも、じゃないです!無理にとは言いません!!少しずつ食べられる量を増やしてください!!」
「わ、わかった。ちゃんと食べるよ…。」
「本当ですね!?絶対ですよ!?」
「う、うん…。」

彼女に怒られて蓮は渋々と言った感じで頷く。

「でだ、最上くん。社くんが休むとなると、こいつは食事をとらないと言うのは目に見えている。だから、君は何が何でもこいつに食わせてほしい。」
「…!わかりました!そういうことなら、この最上キョーコ、一生懸命に務めさせていただきます!!」
「ああ、頼む。」

こうして交渉を成立したのだった。