決闘をマリアに申し込まれたキョーコ。目を白黒させていたが、
「もし、私が負けたら、あなたの言うことを何でも聞くわ!」
少女のその発言に一瞬、目を見開いたかと思えば、真顔になる。
「…いいわ。勝負する内容は?」
話に乗ってきたキョーコにマリアは、
「良いものがあるわ。」
ニヤリと笑った。
「…これは?」
キョーコの手にはマリアから渡された携帯ゲーム機とゲームソフトがある。
「見てのとおりゲームよ。でも、ただのゲームじゃないわ。恋愛ゲームよ。」
ゲームソフトは“華麗なるスキップ人生!!”と言う名前らしく、
「ヒーローの一人が蓮様にそっくりなの!あ、まだ私もやってないから安心していいわ。証拠にまだ開けてないでしょ?」
確かにゲームソフトは買ったままなのか、ビニールに包まれていた。
「で?これでどう勝負するのよ?」
今まで黙っていた奏江が口を開くと、
「簡単よ。先にグッドエンドを先に迎えたほうが勝ち。でも注意点は蓮様似のそのキャラクター意外とエンドを迎えたら、即アウト。しかも難易度が高いらしいわ。試しに貴女やってみてちょうだい。」
「どうして私がそんな面倒くさいことを…。」
「ゲームを公平にするためよ。後からやる人間のほうが有利に決まってるじゃない。それに…私、あのことを忘れたわけじゃないのよ?」
にこっと笑うマリアに奏江は何故か顔を真っ青にし、
「っ…わ、分かったわ。やればいいんでしょ、やればっ。」
奏江はキョーコからゲーム機を貸してと言いながらも、奪い取る形で手に取り、ゲームソフトを開けて、カセットをセットする。
(…?)
そんな彼女にキョーコは首を傾げたが、
「すごーい、モー子さん!私、どこにそれを入れればいいのか、分からなかったのに!」
奏江は褒める。彼女の邪魔ならないようにゲーム画面を見ていると、
「ホントだ、敦賀さんにそっくり~。」
蓮にそっくりなキャラクターが出てきて、口調や仕草まで似ていた。
「ああ~!もう終わっちゃった!」
30分後、バッドエンドとしてゲームは終わってしまう。
「当たり前じゃない。誰にも好意を見せたりしないで行動したんだから。」
むしろ奏江は好意どころか、嫌われる行動を選んでいた。バッドエンドになって当然である。
「で、どっちが先にやるのよ?」
そして、プレイ順番を決めることになったのだが、
「「最初はグー」」
公平にここはじゃんけんになり、
「「じゃんけんポン!!」」
結果は三回勝負で連続二回勝ったマリアの勝ち。
「やっぱり負けちゃった…弱いんだよね…じゃんけん…。」
どうやらキョーコは元々、じゃんけんに弱いようである。
こうしてマリアがキョーコより先にゲームをプレイしたのたが、
「どういうことよ、これ!!」
ゲーム画面には“後輩エンド”と出ており、恋愛ルートすら入らなかった。
「バグってるんじゃないの!?これ!!」
プンプンとマリアは怒り、ゲーム機を叩きつけそうな雰囲気だ。
「はい、次!あなた遣りなさいよっ。」
怒ったまま、ゲーム機をキョーコに渡し、腕を組んでブツブツ言い出す。
そんなマリアに戸惑いながら、キョーコはゲームをスタートさせたが、
(うーん…。)
どれが好感度が上がる選択なのか、キョーコにはサッパリ分からなくて、自分ならこうするかな、と行動を選んでいく。
その結果…マリアは絶句していた。
「あ、あなた…っ。どうやったら一回だけでハーレムエンドなんて行けるのよ…!?」
ゲーム画面にはマリアが言う通り“ハーレムエンド”と出ている。
スチルで攻略男三人に絡まれてる絵が出ているため、どう見てもハーレムエンド。
ちなみに主人公は攻略三人のことを先輩、幼なじみ、マネージャーとかしか思ってなく、男たちが勝手に溺愛していた。
「ふ、普通にやってたんだけど…。」
キョーコは普通にやっているつもりだったが、
「私みてたけど、あんたの選択行動はかなり巧みだったわよ?バッドエンドにならない程度に攻略三人に愛想振る舞いて、攻略三人をその気にさせる、見事なプレイだったわ。」
これをリアルで無意識でやってるなら、あんた末恐ろしい子ね、と奏江が真顔で言う。
「そ、そんなつもりはなかったんだけど…。」
冷や汗を流すキョーコ。正直、なぜこうなったのか自分でもサッパリである。
「ところでこれはアウトなの?一応、鶴岡は落としてるけど。」
ルールで鶴岡以外のルートを迎えたらアウトだったはずのため、奏江が聞けば、
「…勝負は続行でいいわ。ハーレムエンドがあるなんて知らなかったもの。」
悔しそうにマリアは質問に答えた。
その後、マリアはもう一度挑戦したが、結果はノーマルエンド。
またキョーコにゲーム機は回ってきた。今度はハーレムエンドなんかにならないように鶴岡に絞ってプレイする。
「…なんか、口の中が甘ったるい気がしてきたわ…。」
その結果、鶴岡が主人公を口説く内容になってきた。
「いいな~。私も蓮様と口説かれたい…。」
うっとりとゲーム画面を見つめるマリア。
二人はゲーム画面を見ていて気づいていない。キョーコが顔を真っ赤にしているなど…。
何故なら、ゲームの中で繰り広げられている出来事が、だいたい経験済みだからだ。
(わ、私、く、口説かれてたの!?)
いや、そんなはずはないと心の中で首を振る。
すっかり、そのことが頭を支配して、グッドエンドを迎えてゲームが終わったことにキョーコは気づかなかったのだった…。
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あとがき
マリアちゃんのセリフに違和感を覚えるかもしれませんが、そのうち直ります。すみません…。
ローズ