書こうとした“ネタ”が思いのほか、膨らまずに停止中…ごめんなさい、魔○さん…こちらに逃げました…。


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LME事務所の最上階。そこからローリィはすっかり更けた東京の景色を眺めていた。

『お姉様は…ご両親のぬくもりすら知らないのかもしれないわ…。』

眺めながら、考えていたのはマリアのあの発言。

彼の孫娘はまだ7歳だが、鋭いところがある。

もし、マリアの発言通りにそう言う環境でキョーコが育ったと言うのなら…。

「…知らなかったとはいえ、酷な依頼をしてしまったな…。」

恐らく、この件に関してキョーコの心の傷をえぐっただろう。

「…調べてみるか。」

窓ガラスに背をむけ、ローリィはデクスにある電話をとった。

その頃、キョーコはと言うと…。

蓮のマンションのドアの前で、ピンクの携帯を開いており、ため息をつくと携帯を閉じる。

(…“寝ててもいい”か…。)

ため息をついた理由は、蓮からのメール。今日はどうやら、どうしても帰りは1時過ぎになるらしい。

「一人でご飯たべるの久しぶりだな…。」

鞄をリビングにおくと、買った食材をキッチンに持っていく。

気分で手の込んだものを作る気がしなかったキョーコは朝に炊いたご飯で簡単にチャーハンを作り始めた。

「…いただきます。」

作ったチャーハンを皿にもり、リビングで食べ始めるが、ちらっと視線を横にすると彼女は表情を曇らせ、スプーンを持つ手を止める。

そのまま、キョーコは食事をやめた。食べたくなかった。

ソファーに座るとそのまま、横たわり目を閉じる。

そしていつの間にか、彼女は夢の中へと沈んでいった…。

見た夢は、一人で食事する自分だった。幼い自分がコンビニのお弁当を食べている。

母と食事をとったことがない。もちろん、手料理もない。

幼い自分は泣いていた。羨ましかった。周りの子供が。

けれど、それを必死に隠すしかなかった。コンビニで何か買ってくるのも、母は面倒くさいと口にしていたからだ。

自分のためにお弁当をかってくれるのに、料理を作ってほしいと言ってしまったら、今度こそ嫌われるかもしれないと恐れた。

結局、ショウの両親に引き取られるまでそれは続き、初めて食べた手料理は母ではなく、ショウの母の手料理。

思わず泣いて、ショウの母を困らせたを覚えている。

それから場面は数ヶ月前へと…。

帰ってこないショウを待っている自分。結局は帰ってこず、二人分の料理は半分は明日の自分の昼ご飯に変わる日々。

一人で食べるご飯は美味しくなかった。虚しいものだった。

それでも食事するのも、作るのも好きなのは、美味しいと口にすると微笑んでくれるショウの母と、自分の作った料理を美味いと笑顔で言うショウが好きだったから…。

また場面は変わる。蓮がいた。笑って自分が作った料理を美味しいと言ってくれる。言われるたびにキョーコは嬉しくなった。次は何を作ろうかと考えれば胸が踊る。

それは幸せという感情。

蓮は優しい。まるで包まれいるようで。ずっと、そこにいたくなる。願うならば、ずっとここに…。

「…上さん、最上さん。」

聞き覚えのある声が耳に届く。

「最上さん、起きて?」

その声にゆっくりと目を上げれば、蓮が心配そうにキョーコを見ていた。

「つ、敦賀さん…!?い、今何時…。」

バッと彼女は起き上がって、時計を見れば、0時前。

「あ、あれ…?どうして…。」

1時過ぎだったんじゃ…?と蓮を見れば、彼は苦笑いし、予定より早く終わったと答える。

「それより…何か悲しい夢でも見た?泣いてた…。」
「え…?」

彼の指が彼女の涙を拭う。涙の冷たさにキョーコは自分が泣いてたことに漸く気づく。

「どうして涙なんか…。」

キョーコは夢の内容を忘れていた。だから泣いていた理由も分からない。

すると蓮にぎゅっと抱きしめられる。

「…!?あ、あああの、敦賀さん!?」

抱き締められてキョーコは顔を真っ赤にし、

「薬のかわり。」

クスっと蓮が笑ったのが分かって、余計に彼女は真っ赤になった。

「く、薬って…。」

確かに蓮の温かさにあるものが消えていく。

キョーコは彼の背に戸惑いがちに腕を回す。

ああ…と胸が震えた。敦賀さんだ、と彼女は確かめるように胸板に顔を埋める。

会いたかった。蓮に会いたかったのだ。

どうやら予想以上にマリアの件はキョーコの心の傷をえぐったらしい。

そして、その心が真っ先に求めたのは蓮だった。

彼女は彼に抱きしめてほしかった。それなのに、蓮は帰りが遅く、一緒に夕飯をとることができないとわかり、落胆した。

さらに蓮のいない夕飯は美味しくなかった。

ポロッと彼女の目から、ひとつだけ雫がながれ、蓮のシャツに沁みを作る。

ずっと、ここにいられたらいいのに…。

蓮の腕の中、キョーコは確かにそう思ったのだった…。