あれから、キョーコの蓮への態度が変化した。
今まで遠慮がちな彼女が自分から甘えるようになってきたのだ。
控えめではあるけれども。
抱擁などのスキンシップも、あんなに混乱して顔も真っ赤にしていたのに、頬を染めて微笑んだり、恥ずかしそうに俯いたりするだけ。
そんなキョーコに理性が揺らぎまくりの蓮はさらに彼女に惚れ込んだ。もうメロメロである。首ったけである。
(…これで付き合ってないとか、嘘だろ…。)
社の目の前で、繰り広げられる会話に頬をひきつった。
「最上さん、ほっぺにご飯がついてるよ?」
「え?ど、どこですか?」
「動かないで。とってあげるから。」
そう言って蓮は彼女の頬についたご飯の粒を取り、そのまま口に運ぶ。
「美味しい。」
きっと、その仕草が色っぽいのは社の気のせいではない。
そんな蓮を見たキョーコは、恥ずかしくなって俯いてしまう。
(…おーい?俺がいること忘れてないか?いや、忘れてるよな、絶対。)
はぁ、とため息をつき、社は口の中に摩訶不思議に現れた砂糖を洗い流すように、味噌汁を啜るが、味噌汁すら甘く感じる。味覚が可笑しくなったようだ。
キョーコが味噌汁に砂糖をいれるなど有り得ないので。
そもそも、社がここ蓮のマンションで二人と一緒に夕飯をとっているのは、キョーコが夕飯はどうかと誘ったからである。
最初は断ろうと思ったのに断れなかった。蓮にどうせレトルトやお弁当ばかり食べるのでしょうと言われて。
確かにその通りなのだが、蓮に言われるのには頭にきたので、
『お前だけには言われたくない!』
と、つっこんでやればキョーコが同意するように頷き、
『敦賀さんも人のこと言えないですよ?なんとかゼリーとかなんとかカロリーとかで済まそうとするんですから!』
一緒に蓮を説教した。他人がそれを見たら、こう思っただろう。
まるで母とその兄が息子(弟)を叱るように見えると…。
(…さっさと食べて帰ろう…。)
大変、居たたまれない社は食べるスペースを早めたのだった。
゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・:,。☆
あとがき
次回から“ツンデレ”を攻略しに生きたいと思います!!
ここから入らなかった小話↓会話だけ
「…社さん。」
「ん?どうかしたか?」
「てんてこ舞いってどういう意味ですか?」
「ぶはっ!お前、てんてこ舞い知らないのか!?」
「知らないから聞いてるんです。」
「あー、まぁ。あんまり使わない言葉だもんな~。」
「勿体ぶらずに教えてくださいよ…一体どんな舞なんですか?」
「…は?舞?」
「え?だっててんてこ舞いなんですよね?」
「ぶはっ!あはは!お前、へんなとこ天然だよな!!」
「…!?違うんですか!?」
「違うよ。うんと簡単に言うな?お前と俺は休憩時間すら削って仕事してるだろ?」
「はい。」
「それをてんてこ舞いって言うだ。」
「え…!?そういう意味だったんですか!?」
「うん。ちなみにどんな舞を想像したのかな?蓮くんは。」
「そ、それは…。」
その後、しばらくの間この話はネタにされただとか。