LMEのオーディションに参加したことが、そもそもの運の尽きだった、と奏江は思っていた。

実際にその後、とんでもないセクションに入れられ、とんでもない人間に付きまとわれている。

「モー子さぁああああああん!!」

だから、そのとんでもない人間とこれ以上、関わりなど持ちなくもないし、

「ねぇ、モー子さんってば~~!!」

自分は断じて、そんな名前じゃない!!と声の主に振り向きもせず、奏江は早くスタスタと歩く。

とんでもない人間…キョーコとの出会いは正しくとんでもないものだった。

いきなり自分の目の前に現れたのだ。ラブミーユニフォームを着て。

『はじめまして。最上キョーコです。社長さんの依頼で貴女を事務所につれてくるように言われました。』

ニコッと笑う彼女。その瞬間、奏江は頭の中で警告が鳴り響く。

だから、逃げようとしたが、結果的には逃げられなかった。

最上キョーコという人間は大変、しつこかったのだ。それはもう、寄生虫並みに。

奏江が行くさきに、必ず彼女はいるのだ。

『モー子さぁああああああん!事務所に行こうよ~~!!』
『ひぃっ!こ、こないでちょうだい!!い、いくから!!いくから、もうこないでーー!!』

あまりのしつこさに最早、恐怖を感じて奏江はついに降参した。自分から事務所に行くくらい怖かったらしい。

そして現在にいたる。

ラブミーユニフォームは奏江にとって屈辱だ。自分からは決して着ない。

そんな彼女が何故着てるのか?

その答えは簡単。強制的に着せられているから。

ローリィの前につれてかれたと思えば、いきなり10人の女性が出てきて、奏江を取り囲み、無理やりドピンクつなぎを着せた。

ちなみに10人の女性たちは事務所の社員たち。彼女たちは涙を流して言う。

『貴女にこれを着させないと給料を減らされてしまうの…。』

と…それゆえに彼女たちは奏江が必死に暴れようが騒ごうが、ドピンクつなぎを着せることに成功した。

正直、屈辱的なラブミーユニフォームを着るくらいなら、いっそLMEなんて蹴ってしまいたいと奏江は思うのだが、できるわけがない。

だから、俳優養成所で1からやり直そうと思って入ったが…既にことは遅く、自分はラブミー部に所属する形になっている。

(なら、いっそのこと、利用してやるわよ!!)

なんと言ってもLMEだ。事務所の名は大きい。

(絶対にデビューしてやる!!)

奏江はCMオーディションに応募していた。これがものになれば、女優への道が一歩踏み出せる。

その輝かしい未来を想像して奏江は自信にみちた目をし、事務所を出ると青い空を見上げた。

CMオーディションで自分のトラウマと向き合うことになるなど、知らずに…。



゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・:,。☆


あとがき

と言うことでスキビの“ツンデレ”のこと、モー子さんを攻略していきたいと思います!!

しかし、この話ではキョーコは一般的ですので、どうしようかな?って考えてます。


ローズ