(…完全にとばっちりだな、こりゃあ…。)
奏江がクジ引き直しを止めたあと、2人を引き離せるためにキョーコだけを会場に残して、他の受験者たちは控え室に戻っていったのだが、黒崎が入り口に立って後ろ姿のキョーコを見ている。
(しかし、随分と思い切ったな、あのお嬢ちゃん。)
彼はパチンとライターを開け、着火するとタバコに火をつけた。
(打ち合わせなしでもリードできる演技力の持ち主なのか、それとも…。)
彼女を信用して…なのかは黒崎には分からない。
(まぁ、見ればわかるだろ。)
ライターをジャケットのポケットにしまい、黒崎は会場を後にした。
その20分後…。
受験者たちが会場へと戻ってきて、課題が始まり、それぞれのペアが喧嘩をしていく。
(…う~む…なんだよ、お嬢さん。金を武器にしなくても、なかなかの実力者じゃないか。)
絵梨花の番が終わり、黒崎は感心した。てっきり実力がないら金を武器にしていると思っていたのだが…違ったらしい。
「監督、高園寺さんどうです?なかなかいいでしょ?スッゴくいいでしょ!?特に家柄最高でしょ!?」
その横でやたら絵梨花をほめちぎるカインドー社の重役だが、黒崎は右から左に聞き流す。
「はい。では次、3Aと3Bの人。」
そうこうしてる内に奏江とキョーコが前にやってきて、
「はいよ、お待たせ。次、始めて。」
「はい、よろしくお願いします。」
「よ、よろしくお願いしますっ。」
2人は黒崎たちに頭を下げてお互い向きあった。
(さて…誰よりも不利なこの状況で何をする気だ?お二人さん。)
まったく、どう言う喧嘩するか分からないため、黒崎は面白そうだと口元を上げる。
「よーい、スタート!」
そして今井の合図と共に、奏江とキョーコは睨むあった。
しかし2人は睨み合ったままで何も言葉を発しようとしない。
普通なら、たった60秒という時間制限の中で少しでもアクションをおこすはずなのだが…。
そう受験者たちも黒崎たちも思っていた頃だ。
パシンっ!と奏江がキョーコの頬を叩いたため、会場にいる全員が驚く。
殴られたキョーコも直ぐに奏江を殴り返そうと手を上げたが、奏江が後悔の表情を浮かべながら、キョーコを殴った手を震わせているので、キョーコのその手は止まり、そのまま奏江は泣き崩れしまう。
そんな奏江に、キョーコも悲しそうな表情を浮かべると、彼女を殴り返そうとした手をゆっくりと下ろし、
「…ごめんなさい…。」
呟くように謝罪した。コロっと黒崎の手からボールペンがテーブルに転がる。
「!?」
すると突然、泣き崩れていた奏江は立ち上がり、
「ありがとうございました。」
「え!?」
「あ、ありがとうございました!」
何事もなかったかのように頭を下げた後、去っていくので、キョーコも慌てて頭を下げた後、後を追う。
「か…監督、時間余ってます…。」
「え゛!?」
驚く黒崎。こんな早くも思わなかったのだろう。
驚いた表情のまま、彼はサングラスを外し、壁に背を向けた奏江とキョーコを見たのだった…。
゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・:,。☆
あとがき
えーと、良いネタが思いつかず原作にしがみつきになってるローズです。
変更する変更し、削るとこは削り落としてます。
モー子さん攻略終わるまで、この状態は続くかと…(汗)
ローズでした