その後、ローリィは帰っていき、蓮の撮影が終わるまでキョーコはローリィから渡された編入試験に必要な書類などを確認していた。

「このくらいなら大丈夫かな?」

試験内容が思ったよりも簡単そうでキョーコはホッと息をつく。

「でも、不思議ね。授業料こんなに安くていいのかしら?」

何だか異様に授業料が安いのだ。不思議に思いながら、キョーコは首を傾げれば、

「最上さん。」
「へ?あ…お疲れ様です、敦賀さん。」

撮影が終わったのか、蓮がこちらにくる。

「お腹すいてない?お弁当もらったから、タクシーの中で食べようか?」

彼の手にはお弁当があり、キョーコに笑いかける。

「はい。でも、敦賀さんは食べますか?食欲いつもよりないんじゃ…。」

通常でも蓮は食欲が無いと言っても等しいため、彼女は心配そうに聞けば、

「…やっぱり食べないとダメ?」
「ダメです!やっぱり食べないつもりだったんですね!?ダメですよ!食事をとらないとお薬のめないんですから!!」

やはり蓮は食事をとるつもりがなかったらしくキョーコは怒る。

「…分かった。できるだけ頑張って食べるよ。そのかわりにしてほしいことがあるんだけど…。」
「はい!なにをすればいいでしょうか!?」

食べてくれると聞いて、笑顔で内容を聞けば、蓮はにっこりと笑い、

「食べさせてくれると嬉しいな?」

と仰せられた。

「…はい?な、何をでしょう?」
「これを。」

これと言うのは、もちろんお弁当のことである。

「な…なな!?」

理解してキョーコは顔を真っ赤にした。そしてすぐに、

「む、無理です~!!」

首を振って嫌がった。

「じゃあ、食べなくてもいいよね?」
「ええ!?ダメですよ!!」
「じゃあ、食べさせてくれる?」
「そ、それは…。」
「別に食べなくても俺はいいんだよ?」
「良くありません!!」
「じゃあ、食べさせてくれるよね?」
「っ…。」
「ね?」
「わ…わかりました!!やります、やりますとも!!」

ヤケになったのか、キョーコは羞恥心を捨てる。

そんな彼女を蓮は面白そうにクスクス笑っていた。

「ど、どれが食べたいですか?」
「卵焼きが食べたいかな?」

荷物をもった後、タクシーを拾った二人は早速、お弁当を食べることになり、キョーコは捨てきれなかった僅かな羞恥心で箸が震えながらも、卵焼きを箸でつまんで、

「く、口をあけてください…あ、あーん。」
「あーん。」

蓮の口元へ運べば、彼は口をあけて口内に卵焼きを招き入れた。

「美味しい。」
「そ、それは良かったです。」
「今度は最上さんが食べないとね。はい、あーん。」
「え…ええ!?」

彼がコロッケを箸でつまんでキョーコに差し出すため、彼女は驚愕するのと同時に羞恥心が戻ってくる。

「じ、自分で食べます!!」
「でも、君は俺に食べさせるのに忙しいだろう?」
「じゃ、じゃあ!敦賀さんが食べ終わった後に食べます!!」
「でも、そんな時間はないのは最上さんも分かってるよね?」
「そ、それは…。」
「食事はちょっと穫らないダメだよ?」
「う゛う…。」
「はい、あーん。」
「あ、あーん。」

恥ずかしさのあまり、涙目になりがらキョーコは口をあけてコロッケを口内に入れた。

「美味しい?」
「お、美味しいです…。」

もぐもぐと噛んで飲み込むと、今度は俺ね?と言われて彼にご飯を食べさせ、その後に自分も蓮に食べさせられると言う状態が続き、食べ終わるころには長いタクシー移動は目的の場所へと着いたのだった…。