「な…なんなの?この騒ぎは…。」

授業を終え、キョーコは帰ろうと正門に向かったら、ほかの生徒が頬を染めて騒いでいる。

一体何なんだろう?と首を傾げながら、関わらないように正門を抜けようとすれば、

「マテ!ミス・キョーコ!!。」

片言で呼び止められて、え?と振り返れば、そこにはウェーブした美しいブロンドの美女が立っており、彼女がかけていたサングラスを外すと碧眼が瞳が現れて顔の全貌が明らかになると騒ぎはもっと大きくなった。

「ジュ、ジュリエナだ!」
「す、すげー!テレビで見るよりもっと美人じゃんか!!」

特に騒いでいるのは男子だが、

「きれい…。」
「私もあんな風だったらな…。」

女子も彼女に見とれていた。

それほどまで、彼女はこの世の者とは思えないほどの美しすぎる人間で、まるで生きた宝石のよう。

(…お…王女様が目の前にいらっしゃる~~!!)

もう完全にキョーコはメルヘンスイッチが入っていた。きっと頭の中でドレスを着させているのだろう。目がうっとりしている。

「…きゃ!!」

しかし、うっとりしていたのも一瞬の出来事で、何故か彼女に抱きつかれた。

『ああ!なんて可愛らしい子なの!想像通りだわ!!』

彼女は頬でキョーコの頬をスリスリしながら、ぎゅうと抱きしめる。

もう何が何なのか分からなくてキョーコは頭が真っ白になり、されたままだ。

『さて、行きましょう。私、貴女と行きたい場所が沢山あるのよ?』

ガシと手を握られ、キョーコは引っ張られるが、覚醒してないため、されるがまま。

『うーん…これも可愛いけれど、あっちも捨てがたいわね…。』

気がつけば、キョーコは着せ替え人形になっている。

「あ、あの…?」
『どうかしたの?あ、英語は話せない?』
『い、いえ…話せます。』
『そう!良かったわ!ならキョーコは今来てるのとこっち、どっちがいいかしら?』

今着ているのは白のドレス、彼女が持ってるのはピンクのドレス。デザインは違うがどちらも可愛い。

『ど、どっちも可愛いです…。』
『やっぱりそうよね!どうしようかしら!決められないわ~!』
『あ、あの?ジュ…ジュリエナさん…?』

かなり自信がないのだが、他の生徒がそう彼女を呼んだの思い出して不安そうに呼ぶと、

『敬称なんていらないのよ?むしろ私はママって呼んでほしいわ。』

にこっと笑って言うため、

『ええ!?』

キョーコは驚く。それもそうだろう。いきなり、初対面の年上に対して敬称なしやママと呼ぶなんて無理な話だ。

『む、無理です!』
『そう?残念…でも諦めないわ。』

本当に諦めてないらしく、ジュリエナは鼻歌を歌い出し、

『もう面倒くさいから、ここからここまで包んでちょうだい。』

店員に立てかけられているドレスを端から端まで示す。

『あ、ありがとうございます!!』
『あと、靴とアクセサリーも。』
「か、畏まりました!!」

店員はジュリエナに頭を下げていくとドレスや靴、アクセサリーを他の店員たちと一緒に大急ぎで袋に入れたり箱に入れたりする。

『あ、あの、お支払は?』
『これで。』

ジュリエナは持っていた鞄から財布をだし、ブラックカードを店員に渡す。

『お、お預かりいたします。』

カードを預かり、店員はレジに向かっていった。

『あ、あの…。』
『なに?』
『は、入るんですか?これ…。』

キョーコは自分が着てるドレスをゆびさすとジュリエナは目を白黒させて、

『何を言っているの?これは全部あなたのよ?』
「…は?」

彼女の言葉にキョーコは耳を疑う。

「え…え?ええ!?わ、私の!!だ、だ、ダメですよ!!ここブランドなんですよ!?入るだけ恐れ多かったのに!!それなのに、こんなに大量に…!!そもそも、他人の私にどうしてそんな大金を…!?」

今までの人生でお金に縁のないキョーコは混乱するが、

『他人じゃないわ。そのうち貴女は私の娘になるのよ?』
「は!?娘!?」
『だって貴女はクオンのお嫁さんになるんだから。』
「お、お嫁さん!?私まだお嫁さんにいくつもりなんてないんですよ!?それにクオンって誰ですか!?私、そんな人知りません!!」
『まぁ!!そうなの!?ダメじゃない!!あの子ったら言ってないのね!!』

何故か、そこでジュリエナは怒りだす。

『決めたわ!キョーコ、貴女にクオンをちゃんとあわせてあげる!!』

彼女の行動は早かった。店員にここに送り届けるようにと住所をかき、タクシーを拾って乗り込む。

そしてキョーコがジュリエナに連れてこられた場所はローリィの豪邸だった…。