そして今現在。

『どうせ、クオンはここにいるんでしょう?』

ジュリエナが腰に手を当て、二人を迎え入れたローリィに聞く。

『ああ。』
『で、私の可愛い息子はどこにいるのかしら?』
『そう急がなくても、すぐに来る。』

ローリィがそう告げたのと同時にドアがあき、

「ダーリン終わったわよ~。」

テンが部屋に入ってきて、彼女に続いて彼も入ってくるが、

『どうして、髪が…。』

髪が元に戻っていたため、ジュリエナは疑問をそのまま口しようとしたが、ハッと何かに思い当たったのか、ローリィを睨む。

『貴方ねっ。貴方のことだから私がここにくるのは勘で分かったんでしょっ。余計なことをしないでちょうだいっ。』
『余計なことをしてるのはお前のほうだろう。』
『余計なことなんてしてないわっ。私はただ…!』

ジュリエナはローリィに対して怒りを爆発させ、言い分を言おうとしたが、

『それがお節介なんだよ、母さん。』
『…クオン。』

自分の息子が会話に割り込んできた。

『母さんの気持ちは嬉しいけど、これは俺の問題だから、お節介はやめてほしい。』
『だけど…。』
『お願いだから、黙って見ててくれないかな?』
『…分かったわ、黙ってる。でも、私が何もしなくてもバレると思うわよ?あとキョーコを可愛がるのは止める気はないわ。それくらい良いでしょう?』

拗ねたように息子に言うと、彼は苦笑いして、分かったよと承諾し、承諾を貰えたジュリエナは笑顔になると、

『キョーコ、彼が私の息子よ。私に似て美人でしょ?』

隣に立つキョーコに息子を紹介したのだが、彼女は彼を見たまま目を見開いて一時停止していた。

『キョーコ…?』

ジュリエナは首を傾げながら彼女を呼ぶ。一方、蓮とローリィ、テンはハラハラした気持ちになる。

「…お…。」

ジュリエナの言うとおり、やはりバレるかと思って、彼らは覚悟してタンを飲み込んだら、

「王子様がいる…!!」

盛大に瞳を輝かせたキョーコの言葉に“彼らはずっこけた。

そう、彼女は全く気づかなかったのだ。目の前の金髪碧眼の青年が蓮だとも“コーン”だとも。

彼女の反応にジュリエナすらずっこけ、

『きょ…キョーコ?貴女、もしかして気づいていないの…?』
『…?何をですか?』

キョーコに質問すれば、彼女は不思議そうに首を傾げる。

恐らくこの様子では先ほどのジュリエナと蓮の会話なども聞いてないだろう。

『…何でもないわ。』

呆れたようにジュリエナは首を振る。ますますキョーコは首を傾げると、

『お嬢さん。』
『は、はいっ。』

彼に呼ばれてドキドキする。

『初めまして。可愛らしいお嬢さん。貴女のお名前は?』

すると彼は床に片膝をついて、彼女の手を取り、その手の甲に口付けをしたため、

『も、ももも最上キョーコといいまふ…!!』

完璧なる理想の王子様にそんなことをされてキョーコは顔を真っ赤にし、噛んだ。

『キョーコ…いい名前だね?』
『い、いえっ。ありふれた名前で、意味なんて全然!!』
『そうかな?俺はいい名前だと思うよ?』
『あ、ありがとうございます…と、ところで、その…そろそろ手を放していただけないでしょうか…?』

キョーコはもう限界だった。あまりの恥ずかしさで心臓が持たない。

『あ、ごめんね?君の手があまりに可愛らしいから、つい。』

彼はにこやかに笑い、片膝をつくのをやめて立ちがあるが、キョーコの手を放そうとしない。

『本当に可愛らしい手だね?』
『そ、そんなこと…。』
『小さくて細くて柔らかい…。』

そう言って、再び指先に口付ける彼。それを見た途端、キョーコは耐えられずに

「は、破廉恥よぉおおおお!!」

もう熟したリンゴのようになった彼女は叫んで、顔を手で覆いながら逃げ出したのだった…。