古い友人がやって来て

他愛もない食事をして

他愛もない話しの中で


もしも自分が今と逆の性なら

どんな人間になっているか、と

提案した


目の前に座る

強面つるっパゲな40男は

「俺ならきっと、可愛い女になるね」と

打ち明けた


実に、キモい


「分かっているのに駄々をこねたり、知ったかぶりをしたりして相手の様子を見る」

それで冷たくされたら泣いたり喚いたりして

男心をくすぐりたい


うーん。

んー何かを間違えているような気がする・・・


「そういう女に男は弱いんだって!!」


それはお前だけだろ?!


そういう女に今までハマってきたのか??

知らなかったよ


「可愛いじゃん」

そういう友人に言って諭す

「もしも私がそうしても可愛いと思うか?」


「思わね」

即答で返って来た

全く腹立たしい


こいつ絶対頭の中で制服来た女子を連想してた

手前ぇの歳いくつだと思ってんだ?

キモいんだよっ!!



「じゃあ、お前がもしも男なら、どんなになるんだよ?」



それにはひとつ

思い当たる節が、ある


怒涛な中学生活を卒業し

高校に入学した時


私は決めていた

中学で難儀だったグループというものには入らない

私は私の欲しい友人を選んで

それを生涯の友とする


そう期待して入学した私の前の席

ラッキーなことに校内一の美人が座っていた


私は美女が好きだ

性格の悪さは必ず顔に出る


だから

美女が好きだ


私はその子を生涯の友にすると決めた

他のブスなんていらない


だから声を掛けた

「あなた、綺麗だね」って


当時の事を彼女は時々言う

「あの時は本当に驚いたよ、変な人に声掛けられたって思った」と


だけど

私達はすぐに仲良くなった

当たり前だ

私はクラスの他の誰も見ていなく

彼女の友にあるべく行動しかしなかったから


其れほどまでに彼女は美しく

高校で開催されるミスにも選ばれた

だけど

その美しさに見合わず

無知で純粋だった


その美しさにいち早く目を付けたのは

3年の野球部のキャプテンだった

彼女を口説き倒し、恋人にしてしまった


どんな服着ていけばいいの?

控えめな方がいい?

やっぱり我儘だって思われるかなぁ?


彼女のそんな悩みを

一手に引き受けるのは私だった



彼女とキャプテンの付き合いはその後3年続き

友人達も「結婚」を囁いた頃

キャプテンの浮気で全てがなかったことになった


彼女は私の元を訪れて泣くので

私はいつも彼女の肩を抱いた

そして

私の吸う煙草を彼女が嫌がると思い

彼女の前で煙草を吸うことをやめた


「アンタは昔からあいつにだけは過保護だね」


同窓会でそんなことを言われ

こう答えたのは必然だった


「あの子だけは、私が守るから。それを私より言う男が現れるまではね」


女が

女性を愛した瞬間だ


私は

彼女を、愛していた



エスコートをして、椅子を引いた

彼女を送ると車のドアを開け

その為に好きな酒さえ我慢した

美しい彼女が送り狼に出会ったら困る


守りたいと思った





だけど

時は経ち



彼女は運命の相手に出会った

そう本人が言っていたのだから、そうなのだろう


私の自宅には幸せそうなドレス姿の彼女と旦那が写っているハガキが届いた



君、本当に幸せ?


私はいつも問うていた

貴女に

貴女に


愛していたから

分かるんだよ

彼が君を幸せにはしないって



案の定

離婚して

子供もなくて

君はまた私に涙を見せたね


大好きだよ

私の前で

そんな風に泣いてくれるんだね


知り合った当時は、私のこと

おかしな人だと思ってた癖に

今は私を頼りに泣いてくれる

ありがとうね

君の為なら

何でもする




君は私が選んだ唯一の友人




ネットとか勢いじゃないんだ



貴女の美しさが私達を結びつけた


君は今も変わらず美しいよ


だから


今も愛している


君の為なら

何でも、するよ