鳥のペットの困ったところは

トイレの躾が出来ないことだ


ああ、また

肩に糞が・・・





最近再婚を果たした男友達と話していた


「何か色々疲れちゃって、ちょっと避難させて」と

彼は言った




表向き

厄介な家庭問題から解放されて

気ままな独身生活を謳歌していたと思ったら

とんでもなく若いかみさん捕まえて

夢のような新婚生活を始めたクセに



「疲れたなんて、今のあなたが言っちゃダメ」

私がそう言うと


「そうだろうね。皆、そう言う」と答えた



乾いた笑顔のその人は

私の友人の中でも特別声の良い

私にとっては大切な友人だ


私は彼と恋愛関係になったことがないので

恋する彼がどんなかは知らないが

それはもう仕事熱心で

タフでありながら繊細な心を持つ素敵な人だ


そもそも私達は頻繁に会うことはなかったし

知り合いの店に行ったらたまたま会った

そういうことが多い間柄だ




そんな関係の女友達のところに

彼は「避難」して来たのだ


一体、何から逃げて来たのだろう?




「どれもこれも上手くいってる。仕事も順調だし、家庭も結婚式の色々から落ち着いて余裕も出てきた。かみさんとも、関係は悪くない」



じゃあ、何だよ

何か独り身の私としては少しイラつくんですけど



「だから、言葉通り避難だよ。冴と話してると、何か気が楽だから」



あー

出た。

良く言われます、これ

一見、嬉しいようで

喜んでいられるのは若いうちだけ

そもそもね

気が楽な相手とは、恋しないから!!



「仕事仲間と話せば、仕事の話しかしないじゃない。それか若い嫁さんとどうよ?とか、そんなことばっかりで」

「第一、男と話して牽制球の投げ合いみたいなのも疲れるし」

「奥さんと話すのはもっと辛いよ。まだ甘えていい状況じゃないんだよね」



何それ?



「冴なら聞いてくれんだろ?聞いてないような顔で。ふんふんとか、曖昧な返事して」



あなた、それね

「都合のいい女」って言うのよ?

知らなかった?



「あ。やっぱそう?ごめんね」



ごめんね、じゃないよ!

自覚あるなら自制しろよ



「だけど他にいないんだよね、そういう相手」



また出た。

これも良く言われます

この言葉についついほだされます





良く言う人の大半は

奥様とは別の「ぬくもり」を求める


私はそういう無い物ねだりが大嫌い


そんな贅沢言うなら

格別な声を持って来い




だけど

彼は「ぬくもり」が欲しい訳ではなくて

話を「聞いてくれる」相手が欲しいと言う



そのくらい

お安い御用だ


その良い声なら

何時間でも聞きましょう


そして

話の大半は、聞いたらすぐに忘れて欲しいような

答えを求めないものなのでしょう


私に、というより

吐き出したいのなら

いくらでも、どうぞ



彼の話す内容は突っ込み所満載の

まさに男の身勝手、我儘だった


だけど彼はそれを実行する人じゃないから

誰にも言えずにいたんだ



周りからは真面目で誠実

繊細で、温厚


そう見られている

いや、私もそう思っていた彼の

内なる叫びは

私の耳にだけ入り

それを知る者は他に誰もいない



分かっていて言う事は


とても大人、だ




完璧な人なんて、いないんだな


もしいるとしたなら

こういうガス抜きがなければ成立しない



「迷惑?」


ひとしきり話した後で彼が言った



「迷惑かも知れない相手に、よくここまで語ったね。それ最初にする質問じゃない?」

私が問えば



「笑ってるじゃん、冴。嫌な顔しなかった。だから多分大丈夫」

「大丈夫ってあんたが決めるなー!!」



はなから彼は

私なら大丈夫だと嗅ぎ分けて来たのだ




有難いことだ




彼の知り合いなら

相当な人数いるでしょうに


その中から

私を選んでくれたんだ



嬉しいことだ



有難う





人から相談されることは

学生の頃から多かったけれど


この「答えを求めない相談」をされるのは

少し心痛く、切なく


受けた私の心も少なからず

彼に寄り添う



大人の友達






もう少し時間が経って


彼の奥様がそれを引き受け入れるようになればいい




それを今は

切に祈っている