診察室に入るとかなり驚いた。

少し広いスペースだが
事務用デスクが3つ向き合って並べて置いてある。


そして2人(日によっては3人)の医師が、 同時にそれぞれの患者を診察している。

患者の立場から見ると、全く知らない人と、隣り合わせに座らせられて、診察されるのだ。もちろんカーテンで仕切られているわけではない。


当然、隣の患者と医師の話声は聞きたくなくても、一部始終聞こえてくる。

隣の患者が 衣服を上げ、聴診器を当てられていればこちらからも見え、同様にこちらの姿も、見られている事になる。


医師同士のデスクは向かい合って並んで患者さんの丸椅子も並んでいる配置なのだ。


取り敢えず、指定された丸椅子に座って、 背中の痛みが強く15分程度食卓の椅子に座っているだけで、限界である事を伝えると、レントゲン室に向かうよう指示された。


レントゲン室はごく普通だったが、レントゲン写真を見せられて、説明を受ける場所が、患者待合室(ロビー)と診察室の通路上で行っている事に、又1つ驚いた。

患者さんの病状が、待合室にも診察室にも 筒抜けなのだ。


病気というのは、 究極のプライバシーと個人情報なのではないか…!?

しかも、この病院は肛門科の看板も掲げている。

この状態で、どの顔をして自分の疾患の様子を話せばよいのだろう…。


… 医師の診断は「筋膜炎」骨には異常がないそうだ…

診察室の奥に処置するベッドが、3台並んでいる。

取り敢えず、カーテンはあるが、ベッドの上に両手を付け、カーテンも引かぬまま、背中に4ヶ所程痛み止めの注射を打って貰い、かぶれ用の軟膏とロキソニンの処方箋を貰い、病院を後にした。

この摩訶不思議な病院には『近い』という云う理由だけで、月曜日~土曜日迄、リハビリを受ける為、丸3ヵ月毎日欠かさず通う事になる。

*因みに、ロビーのテレビの上の壁に『当医院は患者様のプライバシーに充分配慮しております。個人別の診察を希望される方は、お申し付け下さい』と書かれた小さな紙切れを見つけたのは通い始めて、2ヶ月過ぎてからだ。

その貼り紙の横に、何年も前に子どもの患者さんが書いた
『先生ありがとう…』という内容の医師の似顔絵らしい絵がクレヨンで描かれた、薄汚れた紙が風に揺れていた。

この不思議な病院の“現象”は翌日からまた『新たな不思議』を発見する事になる。