ファイアーボール、再読。 | インタラクリ

ファイアーボール、再読。

最近、体の疲れが、ものすごくて、
休みの日に、本当に、何もできない。

ただ、ただ、ぼけーっとして、
80年代の曲を聴いたり、
80年代のマンガを読み直したりしている。

(恥ずかしいが、歳とった感、アリアリ。)


前回、本棚の奥底から10年以上の歳月を経て、発掘されて
初めて読んだ「SOS大東京探検隊」につづき、
同じ頃、同じ版形で、出版された、もう1冊の短編集である
「彼女の想いで」を、ひっぱり出した。

今日、ぼんやりと読み返しながら、その中に、
当時、ようやく単行本に採録されて多くのファンが喜んだ、
名作「ファイアー・ボール」を再読した。

前に、読んだ時は、なぜか、あまりわかっていなかったのだが、
よく言われるように、「ファイアー・ボール」は「アキラ」の
直接のモトであることが、はっきり、わかった。

(というか、前に読んだ時、なぜ気づかなかったのだろう)

だいたい、兄である主人公の名前が大沢「明」だし、
反体制ゲリラの弟が警察に連行される時の番号が「42」だし。

あとがきの、大友氏自身へのインタビューによる、
作品解説を読むまでもなく「ファイアー・ボール」は未完成の作である。
本人の言によると、「ラストはあと20ページ欲しかった」とのこと。

出稿した作では、4ページくらいで、地球規模のカタルシスまで行くのだが、
本人も言うように、弟の合流も含めて、お話がわかるようには
まったく、なっていない。。。

未完成ゆえ、80年代初頭に出た、大友氏の単行本には、
まったく採録されず、長らく、その名は聞けど、作品は読めなかった、本作。
(今なら、すぐネットに流れたと思うけど)

当時のユリイカだったか、宝島だったかに、
兄が手術台から起きあがる1コマだけ、紹介されていて、
早く読みたいものだ、、、と憧れていた記憶がよみがえる。

それは、さておき、大友氏のインタビューを読むと、
(最新のブルータスのものも、この単行本に載っているものも)

氏の特徴として、完成した作品の内、失敗したところ、
出来切らなかったところ、に、ばかり、気が行くらしい。
完璧主義の天才肌な人には、ありがちなことだ。

と、すると、もし仮に、
「ファイアー・ボール」が、あと20ページあって、
大友氏にとって、納得いくところまで、描き切っていたら、
ひょっとしたら「アキラ」は、描いていなかったかもしれない。

「アキラ」が描かれていなかったら、その後の、日本マンガ史、
日本アニメ史は勿論、その後の大友史も、大きく変わっていただろう。

「アキラ」がなければ、西洋世界に「ジャパニメーション」が
浸透する第1突破口も開けず、たぶん「攻殻機動隊」も作られず、
「マトリックス」も生まれていなかった、かもしれぬ。

勿論、今日の「クール・ジャパン」ブームも、
今のような規模とタイミングでは、来てなかったかもしれない。

と、思うと、「ファイアー・ボール」のお尻が、
20ページ足りなくて、本当に良かったなあ、、、と思うのである。