たまたまお薦めされた日本映画を一気に鑑賞した。

 

 

 

 

1982年発表の映画。70年代の茨城県を舞台にしていると思われる。

今は亡き根津甚八さんが主人公のトラック運転手を好演している。監督は本来ならもっと大柄な俳優を考えていたらしいが、痩身でパンチパーマが似合う根津甚八さんは、この役柄にぴったりハマっていると思う。

当時の日本の田舎にはこんな感じのお兄ちゃんがたくさんいた。

 

相手役のヒロイン・順子は秋吉久美子さんで、これまた「薄幸の、あまり賢くもしっかりもしていない若い女性」を上手に演じている。

あの兄ちゃんとこの若い女性。日常の中で破滅がじわじわと二人を侵食していく。

 

表面的な原因は主人公が常用する覚醒剤だが、根本にあるのは彼の実家の歪んだ人間関係であるとわかってくる。

主人公の生まれ持った僻み根性が、覚醒剤の使用によって増幅される。

 

そんな彼から離れられないヒロイン。なぜなら彼女は母に捨てられたという心の痛手から立ち上がれないから。誰かに依存しないと生きていけない順子。どんなにひどい男でも、彼女は主人公から離れられない。

 

覚醒剤による幻覚、借金、家庭内DV。高度成長期の日本における、田舎の生活習慣を無知蒙昧に守っている人々は無傷なのに、二人はなぜか自滅への方向へと押し流されていく。

 

もし主人公が覚醒剤を使わなかったら、もっと違う考え方ができたかもしれないし、

順子も、男狂いで蒸発を繰り返す母親と自分との境界線を引くことができないのが悲劇だった。「母親と自分は別、自分は自分の生き方がある」と思い切ることができたら、全く違う生き方ができたと思う。

 

私がこの映画で興味深かったのは、やはり70年代から80年代にかけての町並みやファッション、そこに暮らしている人々が、自分の子供時代を思い出させ、懐かしかったことだ。

インターネットもなかったこの時代、人々は今よりもっと違う生き方や考え方があることなど思いもよらなかっただろう。

それを考えるとインターネットってやっぱりすごいや。様々な情報を得る手段が自分の手元にあり、それはどこに住んでいる何人でも関係なく平等に得られるのだから。

 

順子が殺され、主人公は刑務所へ。

二人がいなくなった田舎の農家では、皆が何事もなかったように平穏に暮らしている。結局ブレないで自分に与えられた道を歩き続ける者が勝ちなのだろうか。これらの登場人物の40年後、つまり今の姿はどうなっているだろうな、と想像してみた。

 

 

(今日のスウェーデン写真)

 

ストックホルムのガムラスタンにて。広場には多くの観光客。

 

 

17世紀頃に建てられた建物はそのままに、中だけ改装されて今も現役で使われているのがすごい。