約束①
「ぱぱ、あのね、ままのおたんじょーび、いつなの?」
そう、目に入れても痛くないぐらい可愛がってる娘にそう聞かれたのは、キョーコの誕生日まであと2ヶ月ほどの頃だった。
「サンタさんがおうちにやって来る日だよ。どうして、ママのお誕生日を知りたいの?」と、蓮が訊くと、
「あのね、ままのおたんじょーびに、ぱぱとあいかとで、けーきとごちそうをつくって、”わっ”、てさせたいの。」と蓮が思いもよらない言葉が、娘の口から出てきた。
蓮は、キョーコの誕生日は何処かレストランの個室かホテルのスイート・ルームを予約して家族3人、水入らずで過ごそうと考えていた矢先だった。
蓮は暫く考えた後、「パパ、ママみたいに上手にお料理できないけど、頑張って二人で作ってみようか。」と答えると、愛香はそれはそれは嬉しそうな顔をした。
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約束②
キョーコの誕生日、当日。
蓮と愛香は、昼食に父娘仲良くキョーコの作っていったオムライスを食べていた。
「ぱぱ、あのね、さんたさんに、ぷれぜんとを2つおねがいしちゃだめ?」朝から、何やらソワソワしていた愛香が、蓮に訊いてきた。
蓮が、「愛香は、クマさんのぬいぐるみの他に何がほしいの?」と平常心を保って訊くと、
「あのね、あのね、おねえちゃんかおにいちゃんがほしいの。」と言う娘の言葉に、蓮は飲んでいたお茶を吹き出しそうになったが、何とか堪えた。
蓮は暫く何やら不穏な算段を付けた後、愛香に向き直ると、「う~ん、お兄ちゃんもお姉ちゃんも難しいなあ。」と言うと、愛香はその大きな目に一杯の涙を溜めた。
焦った蓮が、「お兄ちゃんもお姉ちゃんも無理だけど、弟か妹ならなんとかなるよ。」と言うと、たちまち、愛香は笑顔になった。
「赤ちゃんはね、サンタさんじゃなくて、神様にパパとママが一生懸命お願いするんだ。それでね、神様がパパとママのお願いを聞いてくれたら、神様の代わりにコウノトリさんがママのお腹にそっと赤ちゃんを置いて行ってくれるんだよ。」と蓮が言うと、
「おかみさまにおねがいしてくれる?」と言う愛娘の可愛いお願いに、蓮が頷いたのは想像に難くないだろう。